研究課題
昨年度は、ゲノム編集法によりFVII遺伝子ノックアウトを試みたが、RNA干渉法と同様に目的の細胞取得には至らなかった。当研究室では同様の方法で他の複数の遺伝子の発現を抑制した細胞の取得には成功しており、あらためて本遺伝子を標的としたゲノム編集が困難であることが推察された。そこでFVII遺伝子を恒常的に強制発現させた卵巣がん細胞とその陰性コントロール細胞を作成し、FVII発現の効果を検証した。FVIIの発現、増殖能、細胞外小胞(EVs)分泌能、EVs粒子特性、EVs血液凝固活性を測定した結果、FVIIの発現はEVs血液凝固活性、EVsの分泌を増強させる効果があることが明らかになった。また、in vitro 細胞増殖実験ではFVII発現は細胞増殖に影響を与えないことが分かった。本年度はこれらの細胞を実験動物に移植することによりFVII発現の腫瘍増殖における影響、血栓塞栓症発症における効果を検討する予定とし現在実験を遂行中である。また、研究実施計画に基づき、本年度はパラフィン包埋検体を用いたFVIIの免疫染色に適したな抗体を複数の市販、および未市販抗体の中から選定した。具体的には、FVII発現細胞と非発現細胞を用いてセルブロックを作成し、得られた切片を免疫染色に用いて染色性を比較検討した。神奈川県立がんセンターにて診断され、臨床情報が明らかな外科手術検体を用いて作成された卵巣がん組織マイクロアレイを用いてFVII染色を行い、卵巣明細胞がん組織におけるFVII 発現レベルを定量化した。FVIIレベルと患者予後情報との関連性をKaplan-Meier法により解析したところ、FVII発現レベルと患者生存率に有意な相関はなかった。
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Oncol Rep
巻: 45 ページ: 1023-1032
10.3892/or.2021.7944