研究課題
これまでの検討から、肝癌細胞株をはじめとする幅広い腫瘍細胞株でフェロトーシス誘導物質erastinによる細胞増殖抑制が確認され、細胞培養液への鉄添加によってその作用が増強されることが示されていた。ただ、実験間で結果のばらつきが大きく、最終年度はこれまでの結果の妥当性につき、追試による確認を中心に行った。また、erastinによる細胞増殖抑制が、アポトーシスではないことや、glutathione peroxidase 4発現は変化させず機能阻害によりフェロトーシスを起こすであろうことも確認した。さらに、細胞培養液に添加する鉄の形態として、トランスフェリン結合鉄よりも、トランスフェリンと結合していない非トランスフェリン結合鉄(non-transferrin-bound iron: NTBI)の形態やlabile plasma iron(LPI)としての酸化能が強い状態の方がより細胞内に入り細胞増殖抑制への関与を示唆する所見を、我々が独自に新規構築した測定系を併せ検討することで確認した。細胞へのerastinや鉄を加える順序や時間を変えた検討も複数回施行したが、これらでは再現性の高い明確な結果は得られなかった。新型コロナウイルス感染拡大で実験可能日が極めて少なく諦めざるを得なかった検討もあったが、本研究の最重要命題であった、細胞外の鉄の調節により腫瘍細胞にフェロトーシスが効率的に導かれうることや、NTBI及びNTBIによる酸化能であるLPIが重要かつ鉄添加の指標となりうることも示された。また、主に肝癌由来細胞株での検討を行ったが、血液悪性腫瘍やその他の難治性固形腫瘍由来細胞株においてもフェロトーシスは確認され、様々な難治性腫瘍に対してフェロトーシス誘導物質と鉄を巧みに用いることによって既存の治療法とは全く異なった新規治療アプローチの可能性を広げる基礎的基盤が得られたと考えている。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 図書 (3件)
BMC Gastroenterology
巻: 21(1) ページ: 111
10.1186/s12876-021-01674-z
Medical Molecular Morphology
巻: 54(1) ページ: 60-67
10.1007/s00795-020-00259-1
Pharmaceuticals (Basel)
巻: 13(8) ページ: 195
10.3390/ph13080195
日本消化器病学会雑誌
巻: 117(12) ページ: 1100-1108
日本内科学会雑誌
巻: 109(2) ページ: 308-316
医学のあゆみ
巻: 275(8) ページ: 904-905
Medical Technology
巻: 48(8) ページ: 888-889