研究実績の概要 |
若齢および老齢マウスの造血幹細胞(HSC), MPP1, MPP2, MPP3, MPP4, GMP, MEPおよびCLPを用いたATAC-seq を行い、網羅的なオープンクロマチン領域の変化について解析を行った。その結果、特にHSCで、加齢に伴い開く変動領域differentially accessible regions (DAR)が最も多く見られ、その多くは 遺伝子間領域やイントロン領域に存在することが明らかになった。また一方で、GMP, MEPおよびCLP に特異的なDAR も一部存在することが示された。またopen DAR に紐付けられた近傍遺伝子の発現を調べたところ、若齢に比べ老齢HSCで有意に上昇することが示された。 次に、DAR を用いたモチーフ解析を行ったところ、HSC において、STAT、ATF、CNC、Smadファミリーモチーフを含む領域が加齢に伴い開く一方で、Hoxや FOXファミリーモチーフを含む領域が、加齢に伴い閉じることが明らかとなった。またMPP2 において、GATAファミリーモチーフが加齢に伴い開くことが示された。HSCでは、サイトカインシグナルに関わるモチーフが開いていることから、若齢及び老齢HSCにサイトカイン刺激を加えて、遺伝子発現変動を検証したところ、多くのDAR関連遺伝子の発現が、若齢に比べ老齢HSCで有意に高い値で上昇することが示された。これらの結果から、外的ストレスの暴露に伴うHSCのエピジェネティックな変化が、老齢 HSC のストレス刺激に対する反応の増強に関わることが示唆された。
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