研究課題
TCRのaffinityを変化させずに、TCR刺激後の細胞内シグナルの増強を目的として研究を行なった。1. アダプター分子のついたT細胞レセプター(TCR) 遺伝子コンストラクトの作成:数種類のアダプター分子をつけたTCR-α鎖・β鎖を作成した。数種類のコンストラクトを作成し、それぞれT細胞に遺伝子導入したが、TCR テトラマーでよく染まるような、すなわち良好に立体構造を保つものは得られなかった。そのためTCR-α鎖/β鎖と2A配列で結合しているアダプター分子をデザインした。2.TCR-アダプター遺伝子をコードするレトロウイルス・ベクターの作成:レトロウイルス・パッケージ細胞に、我々が作成したTCRおよびアダプター分子をコードするプラスミド・ベクターを遺伝子導入した。培養上清中のレトロウイルスを濃縮してレトロウイルス・ベクターを作成した。3.T細胞に遺伝子導入しアダプター分子の有無による作用を検討する:2で作成したウイルス・ベクターを用いて、ドナーであるヒトのT細胞に遺伝子導入を行った。評価方法としては、TCR刺激後のよりよい細胞増幅を目的とするため、刺激後のインターロイキン-2放出量および実際のTCR刺激後の細胞増幅を中心にさまざまなT細胞機能を検討した。これまでの検討と同様に細胞内ドメインとして4-1BBを用いたものがもっとも良好に刺激後の細胞増幅を促進した。4.In vivoでのアダプター分子の有無の効果の検討:免疫不全マウス(NOGマウス)を用いて、in vivoの効果の検討を行っている。ルシフェラーゼを恒常的に発現するようにさせた腫瘍細胞株をマウスに移植し、その後今回作成したT細胞を輸注する。その上で、経過を追って腫瘍の増殖を検討する。現在HLA-A2を発現するように遺伝子改変を加えた腫瘍細胞株をNOGマウスに移植し、観察可能かどうかの予備実験を行なっている。
2: おおむね順調に進展している
In vitroの検討はほぼ終了し、現在In vivo の検討のための予備実験を行なっている。In vivoの検討では、抗腫瘍活性をbioluminescenceを用いて評価する予定としており、マウスを経時的に評価することが可能であり、効率よくデータを確立できる見込みである。以前用いていた腫瘍細胞株であるU266ではNK細胞に対する脆弱性があるものと考えられ、CTLによる効果が見づらかったため、今回我々は新しい標的細胞株としてMM-1S細胞株を入手し、これにLuciferase-eGFPを恒常的に発現させ、実験に用いている。
現在行なっている予備実験に引き続き In vivoにおける抗腫瘍活性を評価する。今回我々の作成したアダプター分子は活性化部位が3箇所あるが、最近の報告では活性化部位を減らすことによってより良い効果が得られる場合があることが示唆されており、我々のグループでも活性化部位に変異を作成し、報告されているような効果が見られるかどうか追加で検討を行う予定としている。
ほとんど計画通りに研究費は支出されたが、一部見積もりよりも安く入手できたため残高が生じた。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 産業財産権 (1件)
Biology of Blood and Marrow Transplantation
巻: 25 ページ: 417~423
doi: 10.1016/j.bbmt.2018.10.012
Blood Advances
巻: 3 ページ: 105~115
doi: 10.1182/bloodadvances.2018025643
Cancer Immunology Research
巻: 6 ページ: 733~744
10.1158/2326-6066.CIR-17-0538
Medicine
巻: 97 ページ: e0449~e0449
doi: 10.1097/MD.0000000000010449
PLOS ONE
巻: 13 ページ: e0204850
doi: 10.1371/journal.pone.0204850