研究課題
令和2年度は、前年度の結果を踏まえ、本研究で着目しているゲノムDNAメチル化関連遺伝子の条件的ノックアウトマウスモデルを用いてヘテロ欠失を惹起することにより、急性前骨髄性白血病の主要な原因遺伝子であるPML-RARαキメラ遺伝子によって生じる白血病の発症への影響の解析を試みた。約一年程度の経過観察において、臨床的病態の再現には至らず、レトロウイルスによる遺伝子導入と骨髄移植を組み合わせた実験系における解析では困難と考えられ、PML-RARαを発現する遺伝子改変マウスを用いた解析手法を検討している。その一方で、同時に並行して進めていた、以前に構築していた条件的にMLL融合遺伝子を発現する白血病マウスモデルと上記条件的ノックアウトマウスモデルを組み合わせた解析系においては、造血幹細胞・前駆細胞分画における白血病発症に関連する自己複製能の亢進、条件的な生体内白血病発症における、分子生物学的に詳細な解析を行うことができた。その結果、先行研究の結果とは異なり、ゲノムDNAメチル化関連遺伝子の機能喪失は、異常な自己複製能の亢進や、生体内白血病発症について、重大な影響を来すことがなかった。さらに、こうした結果の一部は、従来同様のレトロウイルスによる遺伝子導入を用いた、自己複製能の亢進を検出する実験系においても検討し、同様な結果が得られた。また、白血病発症と関連する、重要な遺伝子群の発現の検討も行ったが、一部を除き、機能喪失による影響は認められなかった。こうした結果を踏まえ、本ゲノムDNAメチル化関連遺伝子の機能を、分子標的とするためには、さらなる検討が必要ではないかと考えられた。
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PLOS One
巻: 16 ページ: e0248425
10.1371/journal.pone.0248425
International Journal of Hematology
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