研究課題/領域番号 |
18K08353
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山下 浩平 京都大学, 医学研究科, 准教授 (80402858)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 好中球細胞外トラップ / シトルリン化ヒストン / 慢性GVHD / 血管障害 / 形質細胞様樹状細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、慢性移植片対宿主病(GVHD)の病態形成における好中球細胞外トラップ(NETs)の役割を解明することである。この命題に対して、GVHDマウスモデルを用いた研究と、GVHD患者検体を用いた研究との二つのアプローチから取り組む計画を立てた。 昨年度は慢性GVHD患者検体、特に患者好中球のNETs産生能をin vitro系で評価する測定系の確立を試み、①蛍光試薬であるCytox Greenを用いてDNA染色を行うことによりNETs形成が観察され、画像による定量化が可能であること、②尿酸結晶刺激によるNETs形成が非常に良い陽性コントロールとして利用できること、③組織炎症の強い血清刺激ではNETs形成が増加する傾向が認められること、を示した。 今年度は新たにマウスモデルを用いた研究に着手した。マウスモデルのコントロールとして、真菌分子CAWS(candida albicans water soluble glycoprotein)腹腔内投与による血管炎マウスを利用し、血管病変のNETs形成をシトルリン化ヒストンや好中球細胞質顆粒蛋白である好中球エラスターゼやミエロペロキシダーゼなどで免疫染色することにより検出を試みた。一般に、CAWS誘発血管炎マウスは川崎病のモデルマウスとして知られるため、昨年度確立したin vitroのNETs測定系を利用して、川崎病患者におけるNETs産生能の評価も試みた。 その結果、さまざまな条件検討によりCAWS誘発マウスにおける大動脈起始部の炎症所見が得られるようになったため、今後炎症組織におけるNETs形成を評価する。また、in vitroの解析では、川崎病患者の血清が健常人好中球のNETs産生能を著明に亢進させる作用があることが明らかとなった。 今後、これらの所見を利用して慢性GVHD病態におけるNETsの役割の解析を進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は研究協力者が本研究に従事できなくなったため、計画通りに実験を進めることができなかった。 昨年度確立した好中球細胞外トラップ(NETs)の定量in vitro測定系を応用することができたが、慢性GVHD患者検体を測定することができなかった。 また、マウス実験に着手し、モデルマウスにおけるNETs産生の評価系の確立を試みたが、その開発途上で今年度は終了した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまで確立したin vitroでのNETs定量測定系や、マウスモデルにおける病変部のNETs産生の検出、NETs阻害剤を用いたマウスモデルのGVHD症状低減化の評価などを試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はこれまで保有していた物品を利用したため、物品費の支出が少なかった。次年度からはin vitroでの解析、マウスモデルにおける解析、の両面からアプローチする予定であり、使用額が増加する見込みである。
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