研究実績の概要 |
本研究は、慢性GVHDの病態形成における好中球細胞外トラップ(NETs)の役割を解明することを目的としている。この研究課題の解決に向けて、GVHD患者検体を用いた実験と、GVHDマウスモデルを用いた解析から取り組む。 これまで、慢性GVHD患者血清を用いたNETs産生能をin vitroで測定する系の確立を試み、①蛍光試薬Cytox Greenを用いたDNA染色や、シトルリン化ヒストンに対する蛍光標識抗体を用いた免疫染色によって、NETs産生能を画像的に測定できること、②尿酸塩結晶による好中球刺激がNETs産生能の測定系のコントロールとして有用であること、③他の炎症性疾患である川崎病患者の血清による刺激が、健常人や非炎症時の血清と比べ、健常人好中球のNETs産生を有意に増加させること、を明らかにした。 また、マウスを用いた研究では、そのコントロールとして真菌由来物質であるCAWS(candida albicans water soluble glycoprotein)の腹腔内投与による血管炎マウスを利用し、シトルリン化ヒストンやシトルリン化反応を媒介する酵素であるPAD4、好中球細胞質顆粒蛋白であるミエロペロキシダーゼなどを免疫染色することで、血管炎部位におけるNETs産生量を評価した。さらに、このCAWS誘発血管炎マウスは川崎病のモデルマウスとして知られるため、上記のように川崎病患者の血清を用いてin vitroでNETs産生量を測定した。 その結果、CAWS誘発血管炎マウスの大動脈基部や冠動脈の病変に多数のNETs産生が認められることを明らかにし、in vitroの実験結果と併せて、学会誌へ報告した(Ann Rheum Dis, 2020)。また、NETs阻害剤であるCl-amidineの投与により、血管炎病変が低減化する傾向がみられることを明らかにした。
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