研究課題
我々はC3HZnFのひとつTFLをリンパ腫患者の染色体異常より発見し、これまでにTFL-/-マウスを作成、IL-17aの炎症性サイトカイン制御を通じTFLが自己免疫疾患に関わることを報告した。今回、リンパ腫予後との関係を検討するため、TFL-/-とリンパ腫モデルマウス(Vav-Bcl2-Tg) との交配を試みたところ、TFL欠失群では腫瘍の大きさに差が無いにもかかわらず、瀕死状態になる時期が早まり、炎症増強によるがん患者のcachexiaと似た病態が観察された。さらにTFL欠失群の骨髄B220-IgM+異常細胞集団の遺伝子網羅的解析でケモカインCXCL-13の上昇を認め、TFL欠失群の腫瘍発症時期に相関して血清CXCL-13の上昇と体重減少を認めた。本研究でTFLがリンパ腫の予後マーカーであることを臨床的に示し、がん制御に関わるメカニズムを動物モデルを用いて明らかにする。TFL発現がDLBCLの予後に関わるか、西脇病院と姫路赤十字病院の協力の下全自動免疫染色機で染色を行い、従来のHans法での病型との関連を検討中である。現在われわれが有する独自の抗体を用いて適切な希釈倍率の検討を行っている。今回2つの評価項目をもって検査結果の一致度を評価した。5000倍希釈の方が、判定の一致率が高まっていることが分かった。2000倍希釈での「完全一致率」は19/41例(46%)、別の評価項目で15/41例(37%)であった。5000倍希釈での「完全一致率」は23/37例(62%)、別の評価項目で21/37例(57%)と改善が認められた。今後専門病理医の再評価を行い、強陽性群の予後を評価する方向で検討を進めていく。5000倍にて陰性判定もより明瞭になっているため、陰性群の予後悪化も、評価する予定である。本研究は神戸大学の学術・産業イノベーション創造本部の発明評価委員会にて特許の継続維持が決定されており、今後臨床応用の期待が高まっている。本研究の一部内容は昨年のアメリカ血液学会にてポスター発表された。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、臨床研究が進行中であり、本研究期間内に一定の成果が得られると考えられている。またマウスの研究に関しても神戸大学血液内科の大学院生の協力により、鋭意進められており、おおむね順調に進展していると考えられる。
研究予定にあるように、臨床倦怠を用いた研究を進めていくと同時に、新規ノックアウトマウスの導入とともに新しい疾患モデルマウスの作成にも取り組んでいく。
次年度は新規マウスの導入など新たな動物実験も予定しており、必要経費が当初の予定とは異なり次年度に経費が必要となってきている。そのため次年度の使用額を上記のように提示した。これらの経費は主に動物実験などに用いられる予定である。
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