研究実績の概要 |
我々はRNA 制御分子であるTFL(別名:Zinc finger C3H12D (ZC3H12D), Regulatory RNase (Regnase)-4)に対するモノクロナール抗体を作成し、臨床検体を用いて免疫染色でTFL発現がDLBCLの予後に関わるかの検証を行ったところ、TFLの欠損している群において予後良好である傾向が認められた。しかしながら、ノックアウトマウスでの検証ではリンパ腫モデルマウスとの交配において、TFL欠失群に炎症増強による病態悪化ならびに早期死亡が観察された。遺伝子網羅的解析でケモカインCXCL-13の上昇が病態の一因であることがわかっており。また、CXCL-13はangioimmunoblastic T cell lymphoma などのリンパ腫において臨床診断のマーカーとなっており、本当にTFLの欠損がリンパ腫患者の予後を改善するのかは疑問が残る。そこで、我々はペンシルベニア州立大学との共同研究において免疫染色の再検討を行うとともに、対象を他のB細胞リンパ腫やT細胞リンパ腫にも広げて検討を行っていく。現在、臨床研究のための倫理委員会の手続きを進めているところである。マウスを利用した研究は現在論文投稿・審査中である。本研究は神戸大学の学術・産業イノベーション創造本部の発明評価委員会にて独自に開発したFISH法(特許5354484号)の特許の維持が取得されていた(昨年度にて特許維持は終了)。本研究はこれで終了したが、以前にも我々はTFLの発現低下と進行した子宮内膜癌の予後悪化を報告しており、また、TFLの発現増加は、肺腺癌予後の改善と相関していたとの報告もあり、TFLが免疫応答と関連しながら悪性腫瘍の重要な分子マーカとなる可能性を、今後も悪性リンパ腫においてさらにすすめていく。
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