研究課題/領域番号 |
18K08360
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
羽藤 高明 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (30172943)
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研究分担者 |
山之内 純 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (10423451)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 血小板 / G蛋白質 |
研究実績の概要 |
我々は血小板減少症と動静脈血栓症が併発して発症している一大家系を見出し、その原因遺伝子異常としてG蛋白共役型受容体の一つであるGPR25の点突然変異を見出した。この遺伝子異常を導入したトランスジェニックマウスを作成したところ、一部に血小板減少がみられたものの個体差があった。これらのマウスについて、すべての臓器の組織学的検討を行ったが、明らかな異常は今のところ見つかっていない。そこで、この遺伝子を欠損したノックアウトマウスの作成を試みた。その結果、ノックアウトマウスの妊孕性は明らかに低下していたことから、GPR25の欠損は胎生致死もしくは妊孕性の低下につがることが考えられた。このノックアウトマウスからGPR25遺伝子変異を導入したノックインマウスを作成する予定であったが、まずはノックアウトマウスの詳細な解析を優先している。次に、抗GPR25モノクローナル抗体を作成して、これを標識マーカーに使うことにより、GPR25が血小板表面に存在していることを確認した。GPR25モノクローナル抗体の報告はなく、我々が作成した抗体が唯一の抗体と考えられた。この抗体は血小板機能を阻害あるいは亢進しないことを確認している。一方、患者血小板は血小板凝集能が亢進しており、また患者血小板の凝集は大きな一つの塊を形成し、強固な凝集塊が形成されていた。さらに血小板表面へのリン脂質(アネキシンV)の露出が有意に多くなっていて血小板表面の凝固能が亢進していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ノックアウトマウスが胎生致死になることがわかり、ノックインマウスの作成が困難になっているが、in vitroでの解析は順調に進んでおり、モノクローナル抗体の作成にも成功した。その成果は第60回米国血液学会(2018.12.1 San Diego)にて発表した。さらに、遺伝子変異導入G蛋白質の活性を調べる検査を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
患者血小板の機能について凝固活性亢進の観点からの検査を行っていく。具体的にはアネキシンVの発現に加えて、トロンビン産生能やscramblase活性をみていく。また、GPR25の生理的意義を確立するためにノックアウトマウスの胎生致死の原因を突き止める必要があり、胎生期での解剖学的、組織学的検討を行っていく。さらに、我々が作成した抗GPR25モノクローナル抗体を用いて、血小板減少患者のスクリーニングを行い、GPR25の発現量を検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ノックアウトマウスの妊孕性が低かったために、マウスの解析が遅れたことにより予定よりも使用額が少なくなった。次年度には胎生期解剖を導入することによって、その解析を進めることにしており、その費用を翌年分と合わせて使用することとした。
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