2020年度は、以下のことを明らかにした。MLL-AF6白血病細胞株を用いて、SHARP1抗体を用いて質量分析 (IP-MS: Immunoprecipitation - Mass Spectrometry)を行った。そこで同定された蛋白の中から、治療標的となるタンパクを見つけ、その機能や結合を阻害できる化合物の同定を試みた。SHARP1の結合タンパクの中で、興味深いことに、クロマチンリモデリング複合体の構成成分を同定し、治療標的となることが示唆された。その酵素活性を有する主要構成蛋白である、リジンアセチル化酵素(TIP60)に着目した。TIP60のコンディショナルノックアウトマウスを作成し、まずは正常造血への影響を調べた。
研究期間全体を通して: 患者検体、ヒト白血病細胞株を用いた概日リズム遺伝子発現: 概日リズム因子の中で、転写因子SHARP1遺伝子がML-AF6白血病患者のみに発現が亢進していた。白血病細胞のクロマチン上での、MLL-AF6の結合部位、SHARP1の結合部位、活性化、抑制性のヒストン修飾の分布をゲノムワイドで解析し、概日リズム因子の発現調節機構を明らかにした。概日リズム因子 SHARP1の白血病の発症、進展へ果たす役割を、shRNAと遺伝子改変マウス(SHARP1ノックアウト)を用いて、明らかにした。SHARP1と結合する蛋白群を明らかにして、その中で酵素活性をもつ蛋白:リジンアセチル化酵素に着目し、治療標的となる可能性を明らかにした。
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