我々はPU.1の発現低下がB細胞腫瘍の発症につながるのかどうかを直接検証するために、PU.1を成熟B細胞から形質細胞でのみ欠失させたCγ1-Cre PU.1 KO mouseを作成しており、高齢になると70%のマウスでDLBCL様のB細胞リンパ腫が発症することを見出している。このB細胞リンパ腫細胞を免疫不全マウス(Rag2-/-Jak3-/-)に移植するとレシピエントマウスは1ヶ月以内に全て致死となり、リンパ腫細胞浸潤による著明な脾腫を認めた。これらのBリンパ腫細胞にレンチウイルスベクターを用いてPU.1を発現させると半分のマウスはレスキューされて長期生存したことから、このB細胞リンパ腫細胞にとってもPU.1が腫瘍抑制因子であることが示された。そこで我々はRNA-seqなどで遺伝子発現解析を行った。3匹のCγ1-Cre PU.1 KO mouse由来のB細胞リンパ腫細胞と、コントロールとして2匹のPU.1-loxPマウスの脾臓由来正常B細胞とでRNA-seqを行い、正常B細胞と比較してB細胞リンパ腫にて発現上昇している遺伝子群、発現低下している遺伝子群を見出し、それらの遺伝子のPathway analysisを行っているところである。 また、多発性骨髄腫細胞の患者の中に血清KL-6高値を示す予後不良の群があること、これらの患者においてはKL-6糖鎖抗原の蛋白であるMucin 1が高発現しており、KL-6高値のMM患者由来の骨髄腫細胞株のMucin 1の発現をshRNAで抑えることで細胞増殖停止が誘導されること、また異種移植のマウスの系でこの細胞株による腫瘍の増殖をshRNAが完全に抑制することを示した。従って、KL-6高値の骨髄腫患者においてはMucin 1の高発現が骨髄腫細胞の増殖に深く関わっていることを示した。
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