研究実績の概要 |
本研究においては、ポリコーム抑制複合体2に属するEZH2や、HMGA2などのヒストン修飾因子が骨髄増殖性腫瘍を発症させるドライバー変異(JAK2V617F変異お よびCALRフレームシフト変異)による病態に対して、どのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的としている。そのために、我々は従来保有している JAK2V617F-Tg(トランスジェニック)マウスに加え、CRISPR/Cas9法によりCALRフレームシフトノックインマウス(Calr-del10-KIマウス)を作成した。 Calr-del10-KIマウスは本態性血小板血症と類似した、血小板と白血球の増加や、脾臓における髄外造血などの表現型を示した。Calr-del10-KIマウスをドナー として骨髄移植を行うと、レシピエントでは本態性血小板血症の表現型は明らかではなかったものの、Calr-del10マウス由来のマクロファージが肺に浸潤し、血 管のリモデリングに関与しうることが明らかになり、骨髄増殖性腫瘍における臨床像として重要な、心血管合併症の病態を明らかにできた(Minakawa et al., Journal of Hematology & Oncology, 2021;14:52)。次いで、Calr-del10マウス由来造血幹細胞における遺伝子発現をRNA sequenceにより網羅的に解析したところ、JAK-STAT系の活性化が見られたほか、ポリコーム抑制複合体2による発現抑制において標的となる遺伝子群がglobalに抑制されていた。そこで、Calr-del10-KI/Hmga2-TgマウスとCalr-del10-KI/Ezh2-cKOマウスを解析し、造血幹細胞の増殖能がやや増強される所見が見られている(論文準備中)。
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