研究課題/領域番号 |
18K08366
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
小川 一英 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (40423800)
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研究分担者 |
大河原 浩 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (10381360)
池添 隆之 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (80294833)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Gas6 / Mer / TA-TMA / HSCT |
研究実績の概要 |
同種造血幹細胞移植(HSCT)の予後を左右する重要な合併症である移植関連微小血管症(TA-TMA)の好発時期に血清Gas6は増加し,特にグレードII以上GVHDで有意に高値だった. 血清Gas6はドナーTリンパ球及び単球で増加していた. 病理学的検討で, 腸及び皮膚GVHD病変でGas6及びTAM受容体Merが高発現した. 培養血管内皮細胞in vivo実験で, rGas6及びgrade III GVHD患者血清は内皮障害(TM発現低下, PAI-1、VCAM-1発現増加)を誘導し, 選択的Mer阻害剤UNC2250はそれら発現変化を抑えた.さらに, 同種造血幹細胞移植(HSCT)マウスを用いた実験で, HSCTマウスのにUNC2250を静脈内投与すると, 肝臓及び腎臓のTA-TMA病変は著明に改善した. これまでの結果はGVHD/TA-TMAの病態に, Gas6-Mer axisが新たな治療標的及びバイオマーカーとなること示した.本研究は2018年日本血液学会総会及び米国血液学会にて報告し、現在、米国誌blood advancesに投稿され、追加実験中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HSCT後に発症するに移植関連合併症の病態の詳細は不明な点が多い. 我々はGVHD及びTA-TMAの好発時期に血清Gas6は有意に増加し, 特にgrade 2以上のGVHDや生着症候群を発症した症例で有意に高値であることを見出した. また, 血清Gas6はドナーTリンパ球及び単球で分泌している可能性を発見した. 病理学的検討で, 腸管及び皮膚GVHD病変でGas6及び受容体Merが高発現していた. 培養血管内皮細胞in vitro実験では, rGas6及びグレード3のGVHD患者血清が血管内皮障害(TM発現低下、PAI-1、VCAM-1発現増加)を誘導し, 選択的Mer阻害剤UNC2250はそれらの発現変化を抑制した. さらに, HSCTマウスを用いた実験では, UNC2250を静脈内投与すると, HSCTマウスの肝臓及び腎臓のGVHD及びTA-TMAが著明に改善した. これまでの研究成果から, Gas6-Mer axisがTA-TMA/ GVHDの新たな治療標的となること明らかにした.本研究は2018年日本血液学会総会及び米国血液学会にて報告した。
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今後の研究の推進方策 |
1)TA-TMAのバイオマーカーの探索 Gas6と可溶性MerはELISA法で測定する。Gas6, 可溶性MerとTA-TMA診断指標(血清LDH, 高血圧,補体C5b-9 (human ELISA kit), 尿蛋白/creatinine比 (≥2 mg/mg), 貧血(Hb<8g/dL), 破砕赤血球等), 血清NETsレベル(MPO-Histone ELISA Kit)との相関関係を検証する。 2)内皮障害を起因としたTA-TMAの分子機序におけるGas6/TAM systemの役割 rGas6、サイトカイン、補体C5aにより誘導された内皮障害マーカー(TM, PAI-1,VCAM-1,eNOS等)の発現変化をRT-PCR及びWestern blottingにて検証する. 詳細な分子機序の解明のため, MAP kinase、NF-B活性、低分子GTPase活性を検証する。それら発現や活性化に対する選択的TAM阻害薬(UNC2250, TP-0903, BGB324), 抗Gas6中和抗体の効果を検証する. 3)TA-TMAの新規治療候補の探索ドナーB6.SJL-PtprcaPEP3b/BoyJマウス、レシピエントBALB/Cマウスを用いたHSCTマウスを作成する➀マウスに選択的TAM阻害剤を投与し、TA-TMA病変(肝, 腎, 皮膚, 消化管)に対する効果を検証する. 対照群と阻害剤投与群との生存率を比較検討する. ②マウス血中のFOXP3+Tregを含む免疫担当細胞, CD123+樹状細胞の動態をFCMで測定する。それら細胞動態に対する選択的TAM阻害剤, 抗Gas6中和抗体の効果を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
HSCT後に発症するに移植関連合併症の病態の詳細は不明な点が多い. 我々はGVHD及びTA-TMAの好発時期に血清Gas6は有意に増加し, 特にgrade 2以上のGVHDや生着症候群を発症した症例で有意に高値であることを見出した. また, 血清Gas6はドナーTリンパ球及び単球で分泌している可能性を発見した. 病理学的検討で, 腸管及び皮膚GVHD病変でGas6及び受容体Merが高発現していた. 培養血管内皮細胞in vitro実験では, rGas6及びグレード3のGVHD患者血清が血管内皮障害(TM発現低下、PAI-1、VCAM-1発現増加)を誘導し, 選択的Mer阻害剤UNC2250はそれらの発現変化を抑制した. さらに, HSCTマウスを用いた実験では, UNC2250を静脈内投与すると, HSCTマウスの肝臓及び腎臓のGVHD及びTA-TMAが著明に改善した. これまでの研究成果から, Gas6-Mer axisがTA-TMA/ GVHDの新たな治療標的となること明らかにした.本研究の今後の目的は①これまでの研究成果を踏まえて、TA-TMAの病態をより詳細に解明する ②Gas6, 可溶性MerがTA-TMAの有用な予後予測マーカーであること証明する ③選択的TAM受容体阻害薬(UNC2250, TP-0903, BGB324)がTA-TMAの有効な新規治療薬であることを証明にする.TA-TMAの病態解明や新規治療候補, バイオマーカーの発見は急務であり, 研究の継続のため次年度使用額が生じました。
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