研究成果の概要 |
ABL (ABL1) と ARG (ABL2) は互いに相同性の高いファミリー遺伝子であるが, 相似するTEL/ABL, TEL/ARGを発現させたマウスでは異なる病態発症を確認している. この相違を導く分子基盤の解明に向けて各種変異体遺伝子を作製して検討した. 造腫瘍活性を反映する細胞増殖能の相違はARG- C 末の抑制機能に起因しており, その責任部位と思われるC末内特定のプロリンとチロシン残基を突き止めた. またYeast Two Hybrid 法によりARG-N末へのSTAT3 の特異的結合を検出し, 病型を反映する血球分化誘導には特定STAT アイソフォームの関与が示唆された.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
今回得た基礎結果をさらに発展させて造白血病活性を制御する新たな内因性メカニズムの特定を目指しており,その理解により新規分子標的治療法の開発に繋がることが期待できる. また Mastocytosis の病因として新たにARG の関与を提言できたことは, 今後の診断や治療選択への有用性から臨床に大きく貢献できる. 病態方向性の違いを通して, 基礎的にはABLファミリー遺伝子間での血球分化誘導における役割や, 特異的機能発現に関わる転写因子STATアイソフォーム使い分けの理解に役立つと期待される.
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