研究課題
成人T 細胞白血病・リンパ腫(ATL)はヒトT 細胞白血病ウイルス1 型(HTLV-I)を原因とする難治性の造血器腫瘍である。我々はこれまでの研究で特定のアミノ酸配列を含むTax特異的T細胞受容体(TCR)の全長DNA を健常人末梢血単核球に遺伝子導入して作成した細胞傷害性T細胞(CTL)は、HTLV-I感染細胞に対して強力な細胞傷害活性がみられることを示した。一方、この遺伝子導入免疫細胞療法の臨床応用にあたり、ATL患者自身の末梢血から十分な細胞傷害活性を有する十分な細胞数の遺伝子導入CTLを誘導できるかという点と、ATL患者の体内においてTaxの発現が低下あるいは欠失しているという点が懸念される。本研究では実際にATL患者の末梢血からのCTL誘導を試みるとともに、ATL細胞のTaxの発現の程度と遺伝子導入CTLの有効性の相関について評価する実験を開始した。これまでに、倫理委員会の承認を得て、実際のATL患者から初発時、初回化学療法後、抗CCR-4抗体投与後などの様々な状況での末梢血単核球および腫瘍細胞を取得した。稀少疾患のため検体の収集が遅延したが、ようやく実験可能な検体数に到達し、実際の治療における患者体内での動態に近い環境を再現するために、患者末梢血単核球に遺伝子導入する環境の最適化の検討を行い、条件を設定することができた。しかし、5’-LTR領域にメチル化がみられた腫瘍細胞に対してメチル化阻害薬であるアザシチジンの併用効果について評価する実験については、COVID-19等による進捗の遅れのため、実現することができなかった。また、Taxの発現と遺伝子導入CTLの有効性との相関についての予備実験として、mRNAレベルでTaxの発現を評価する系を確立した。今後、医師主導治験においてコンパニオン診断薬として用いるために検査会社と提携してキット化を進めている。
すべて 2020
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Biol Blood Marrow Transplant.
巻: 26 ページ: 1377-1385
10.1016/j.bbmt.2020.04.006.