研究課題/領域番号 |
18K08370
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
大森 司 自治医科大学, 医学部, 教授 (70382843)
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研究分担者 |
早川 盛禎 自治医科大学, 医学部, 講師 (30326847)
長尾 恭光 自治医科大学, 医学部, 准教授 (80303874)
鴨下 信彦 自治医科大学, 医学部, 講師 (90302603)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 血液凝固第VIII因子 / 血友病A / 再生医療 / 遺伝子治療 |
研究実績の概要 |
血液凝固第VIII因子(FVIII)は他の凝固因子と異なり、様々な組織の内皮細胞や間質細胞が産生細胞と考えられている。しかし、生体でFVIIIを産生する細胞の解剖学的部位や細胞の特徴は分かっていない。我々はFVIII産生細胞を同定するために、Cre発現でFVIIIが欠損するとEGFPを発現するノックイン(KI)マウスを作製した。本研究は、本KIマウスを用いて個体発生過程におけるFVIII産生細胞の起源を同定し、その生物細胞学的な特徴を明らかとすることが目的である。これまでに、EGFPで示されるFVIII産生細胞は、CD31、CD146が高陽性でLyve1陽性の肝臓類洞内皮細胞であること、EGFP陽性細胞はE12.5から肝臓に出現し、胎仔の成長に伴い徐々に増加し、新生仔では、成マウスと同程度になることを明らかにした。また、2019年度は、12.5, E17.5の胎仔肝臓からLyve1陽性細胞をソーティングし、マイクロアレイでmRNA発現を網羅的に解析し、FVIII産生細胞の分化に伴い増加する表面マーカーを同定した。また、CAGプロモーターの下流にtdTomatoを発現するAAVベクターを投与し、第VIII因子産生細胞に遺伝子導入が可能なことを確認した。今後は、これまでの知見から、第VIII因子産生細胞に特異的なプロモーターを選別し、第VIII因子産生細胞に効率的なベクター構築、ならびにiPS細胞の第VIII因子産生細胞への分化を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、FVIII産生細胞がEGFPで検出できるノックイン(KI)マウスを用いて、各発生段階でのEGFP発現を経時的に観察した。EGFP陽性細胞(FVIII産生細胞)はE12.5より肝臓に出現した。EGFP陽性細胞の割合は徐々に増加し、新生仔では、ほぼ成マウスと同程度だった。2019年度は, E12.5, E17.5の胎仔肝臓からLyve1陽性細胞をソーティングし、マイクロアレイでmRNA発現を網羅的に解析した。F8だけでなく、複数のmRNAの発現が観察でき、FVIII産生細胞の分化に伴い増加する表面マーカーを同定した。またKIマウスの交配から受精卵を得て、この受精卵からES細胞を樹立した。また、CAGプロモーターの下流にtdTomatoを発現するAAVベクターを投与し、第8因子産生細胞に遺伝子導入が可能なことを確認した。以上より、研究は当初の予定通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにAAVベクターを用いて第VIII因子産生細胞に遺伝子導入が可能なことを見出した。今後は、2019年度に得られたマイクロアレイの結果をもとに、第VIII因子産生細胞に特異的なプロモーターを選別し、第VIII因子産生細胞に効率的なベクター構築を行う。また、遺伝子発現の変化から、第VIII因子産生細胞の分化に必要な因子を特定し、iPS細胞の第VIII因子産生細胞への分化方法を検討する。さらに未分化、分化細胞に第VIII因子を発現させ、細胞の安定性、タンパク質の産生を比較検討する。これらの検討によって血友病Aゲノム編集や細胞治療、リコンビナントタンパク質の産生改善に結びつくことが期待される。
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