研究課題
CD109分子はTGFbシグナルのnegative regulatorとして知られているが、造血器系における発現および役割はほとんど解析されていない。そこで、今年度はマウスを用いて血液細胞におけるCD109発現を解析した。その結果、マウスにおいてCD109は脾臓におけるごく一部の成熟Bリンパ球に発現しているのみであり、骨髄未分化造血細胞(KSL, MEP, GMP, CMP, CLPなど)においては発現が認められないことが明らかとなった。過去の小数のレポートでヒト骨髄におけるCD109発現が報告されているため、マウス非発現という結果は極めて意外なものであったが、再解析を行っても同様の結果が得られたため、マウスとヒトにおいて造血細胞のCD109の発現は大きく異なることが明確となった。そこで、今後はマウス骨髄ストローマ細胞におけるCD109発現を確認し、骨髄微小環境におけるCD109の役割の可能性について検討を行う方針としている。既に当研究室では骨髄間葉系幹細胞の分離など、間葉系細胞を取得する技術を確立しているため、骨髄微小環境の解析は比較的容易に進められるものと考えている。また、CD109ノックアウトマウスを準備しているが、解析可能な段階まで個体数を増やすことができたため、ノックアウトマウスにおける造血系・免疫系の状況を解析し、CD109の役割について検討する。一方、本研究では造血器疾患患者におけるCD109の意義を検討するために、患者血清における可溶性CD109の測定を行う計画としており、予定通り本年度は倫理委員会承認を得て患者検体の収集と解析を開始することができた。来年度も検体の収集と解析を継続する方針である。
2: おおむね順調に進展している
マウス骨髄におけるCD109非発現は予期せぬ結果であり、解析のターゲットを骨髄ストローマ細胞や免疫細胞に変更せざるを得なくなったが、ヒト検体の収集は順調に進行しており、研究遂行は概ね順調と考えている。
マウス骨髄微小環境および免疫系細胞におけるCD109の役割について解析を加えていく。また、ヒトではCD109の発現が確認されているため、各種血液疾患における血清可溶性CD109測定を行うことで、各種疾患におけるCD109の意義、またバイオマーカーとしての利用可能性について検討を加えていく方針である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件)
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