研究実績の概要 |
CD109分子はTGFbシグナルのnegative regulatorとして知られているが、造血器系における発現および役割はほとんど解析されていない。そこで、本研究ではマウスを用いて血液細胞におけるCD109発現を解析した。その結果、昨年度までにマウスにおいてCD109は脾臓におけるごく一部のタイプの成熟Bリンパ球に発現しているのみであり、骨髄未分化造血細胞(KSL, MEP, GMP, CMP, CLPなど)においては発現が認められないことが明らかとなっている。 このため本年度はCD109ノックアウトマウスの表現形質をさらに詳細に解析し、CD109が担う生物学的活性について解析を行った。その結果ノックアウトマウスにおいては、脾臓におけるplasmablastに低下傾向が認められた。現在、本表現型について確認するため、脾臓plasmablastの解析を継続している。 一方、本研究では造血器疾患患者におけるCD109の意義を検討するために、患者血清における可溶性CD109の測定を行う計画としており、委員会承認を得て患者検体の収集と解析を開始した。健常人を含めて現時点で23例の検体を収集し、血清可溶性CD109濃度の測定を行ったところ、複数のITP検体において健常人と比較して可溶性CD109が高値であることが判明した。TGFbは巨核球造血に必要なことが知られているため、CD109と巨核球の関連が示唆される結果であるが、今後は症例数をさらに増やし、血小板減少をきたす他疾患における可溶性CD109レベルと比較することで、本データの診断利用における有用性を検討する計画である。
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