研究課題/領域番号 |
18K08373
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
鈴木 利貴央 東海大学, 医学部, 講師 (70514371)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多発性骨髄腫 / セマフォリン3A / 骨髄間質細胞 / 骨細胞 / PI3K-AKT / 転換 |
研究実績の概要 |
本研究では、多発性骨髄腫におけるセマフォリン3Aとその受容体ニューロピリン1の相互作用の薬剤耐性メカニズムにおける意義を明らかにすることを目的とし、次年度も多発性骨髄腫内におけるセマフォリン3A、骨髄間質細胞におけるニューロピリン1の生物学的意義のin vitroでの検討を継続して行う。前年度までの解析にて、骨髄腫細胞株に代表的な骨髄腫治療薬であるプロテアソーム阻害剤ボルテゾミブを作用させると、骨髄腫細胞内でセマフォリン3Aのactive formの発現が増強することが薬剤耐性に関与すると考え、セマフォリン3Aを切断する代表的なfurin-like pro-protein convertaseであるfurinがボルテゾミブより制御されるメカニズムと、セマフォリン3Aの細胞内シグナリングハブとして機能するCDK5により制御されるメカニズムを想定しin vitroでウェスタンブロットを中心とした検討を行ったが、ボルテゾミブの投与によりそれらの発現変動は認められなかった。現在はセマフォリン3Aの骨髄微小環境側への作用から誘導される耐性メカニズムに着目している。骨髄間質細胞株HS-5に対してセマフォリン3Aを作用させたところ、ウェスタンブロット解析にてPI3K-AKT経路が活性化されることを見出した。骨細胞から分泌されるセマフォリン3Aが骨芽細胞の誘導に関わっていることは既に報告されていることから、セマフォリン3Aにより骨髄間質細胞から骨(芽)細胞に転換される結果、多発性骨髄腫細胞の支持機構が変化することで薬剤感受性にも影響を及ぼす可能性について想定している。次年度はこのメカニズムについて詳細に解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床業務の多忙と、研究遂行に想定以上に時間を要したため、本研究の進捗はやや遅れているが、前年度まではセマフォリン3Aの多発性骨髄腫における作用から誘導される薬剤耐性メカニズムに注目して解析してきたが、今年度はセマフォリン3Aの骨髄間質細胞おける作用から誘導される薬剤耐性メカニズムの生物学的意義に着目して解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は多発性骨髄腫細胞外のセマフォリン3Aを介した薬剤耐性メカニズム、特に骨髄間質細胞側へのニューロピリン1受容体を介したセマフォリン3Aの作用に関する解析について本格的に取り組む予定である。想定されるセマフォリン3Aによる骨髄間質細胞の骨(芽)細胞への転換メカニズム、そしてそこから派生すると思われる薬剤耐性メカニズムを明らかにしたい。また、我々は骨髄腫ゼノグラフトマウスモデルを用いてセマフォリン3A以外にも多発性骨髄腫の薬剤耐性に関与すると考えられる有望な候補を20個程度同定しており、公共データベースからのマイクロアレイ解析結果と対比させることで、その意義について平行して解析を行うことを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度までの解析にて多発性骨髄腫細胞におけるセマフォリン3Aの作用に着目していたが、次年度は骨髄間質細胞に主に着目し、セマフォリン3Aの作用により誘導される骨髄間質細胞から骨(芽)細胞への転換を介した薬剤耐性メカニズムについて解析する予定であり、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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