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2018 年度 実施状況報告書

HTLV-1キャリアのATL発症予防対策に向けた潜伏感染のメカニズム解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K08378
研究機関国立感染症研究所

研究代表者

浜口 功  国立感染症研究所, 血液・安全性研究部, 部長 (90348780)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードHTLV-1 / ヒト化マウス / in situ hybridization
研究実績の概要

HTLV-1感染における生体内でのリザーバー組織や感染細胞を同定する目的で、ヒト化マウスにHTLV-1を感染させることでHTLV-1キャリアマウスモデルの確立を試みた。この度ヒト化マウスにHTLV-1感染細胞株を経口投与することで長期間の低ウイルス量が維持されることを見出し、未症候キャリアモデル確立の可能性が示された。
また、ウイルスリザーバー等の同定のための研究手法の改善に取り組んだ。HTLV-1は生体内ではウイルス抗原の発現量が極めて低いレベルで維持されており、組織における感染細胞の正確な局在や分布を検討することが困難であった。そこで、次世代のin situ hybridization手法を用いて生体内HTLV-1 RNA検出法の確立を試みた。HTLV-1ウイルスゲノムからは少なくとも6種類の転写産物がplus-strand mRNAとして機能することが明らかになっているが、これらのRNA種の共通配列にプローブを作成することで、全てのmRNAを網羅的に検出可能な系を開発した。共通配列を検出することで対象となるmRNAコピー数が増加し、検出感度を飛躍的に高めると考えられた。
本検出法を用いてHTLV-1感染ヒト化マウスにおける各組織におけるHTLV-1発現細胞を解析したところ、リンパ系組織(脾臓、胸腺、腸管膜リンパ節)において顕著なウイルスRNAのシグナルが検出され、これらの臓器においてHTLV-1は活発に発現していることが明らかになった。一方、腎臓、心臓、胃や小腸等の臓器ではほとんどウイルスRNAは検出されなかったが、肺や肝臓の一部ではリンパ濾胞状に集簇したHTLV-1発現細胞が確認された。今後これらのHTLV-1発現細胞についてウイルス学的な意義を検討する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

HTLV-1感染細胞株の投与経路を検討した結果、ヒト化マウスへ経口投与することで、腹腔内投与と比較して長期間の低ウイルス量が維持されることを見出した。HTLV-1経口感染モデルは未症候キャリアのモデルとなる可能性が示唆され、さらに感染ルートの解明やウイルスリザーバー等の同定に有用なモデルであると期待された。また、新規in situ hybridization法の開発に成功し、生体組織内でのHTLV-1発現細胞の可視化が可能となった。これらの成果は次年度以降の研究の進展に大きく寄与するものと考えられる。

今後の研究の推進方策

生体内でのHTLV-1感染細胞の動態、クローナリティの変化やクローン選択、ウイルスリザーバーの出現等には、宿主の免疫機構と感染細胞の相互作用が大きな影響を与える可能性が指摘されている。より実際の感染者の生体内状態を再現するHTLV-1キャリアモデルの確立においては、宿主免疫応答の誘導が不可欠であり、これまでのヒト化マウスモデルの改善が必要である。そこで、HLA遺伝子を導入した免疫不全マウス (NOG-HLA-A2 Tg) に対してHLA-Aアリルが一致する造血幹細胞を移植することで、HTLV-1特異的免疫応答の誘導を再現した新規ヒト化マウスモデルの確立を目指す。

次年度使用額が生じた理由

年度末納品等にかかる支払いが平成31年4月1日以降となったため。当該支出分については次年度の実支出額に計上予定であるが、平成30年度分についてはほぼ使用済みである。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Adult T-cell leukemia/lymphoma-related ocular manifestations: analysis of the first large-scale nationwide survey2019

    • 著者名/発表者名
      Kamoi K, Okayama A, Izumo S, Hamaguchi I, Uchimaru K, Tojo A,Ohno-Matsui K
    • 雑誌名

      Front Microbiol

      巻: 9 ページ: 3240

    • DOI

      10.3389/fmicb.2018.03240. eCollection 2018.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Value assignment of the reference material for HTLV-1 quantitative PCR in Japan2018

    • 著者名/発表者名
      Kuramitsu M, Okuma K, Nakshima M, Sato T, Umeki K, Sasaki D, Hasegawa H, Kubota R, Sobata R, Matsumoto C, Kaneko N, Sasada K, Tezuka K, Uchimaru K, Iwanaga M, Sagara Y, Yamano Y, Okayama A, Miura K, Satake M, Saito S, Watanabe T, Hamaguchi I
    • 雑誌名

      Microbiol. Immunol.

      巻: 62 ページ: 673-676

    • DOI

      10.1111/1348-0421.12644.3.

    • 査読あり
  • [学会発表] 血液製剤の安全性強化に向けたHTLV-1/2高感度マルチプレックス核酸検査法の開発2018

    • 著者名/発表者名
      大隈和、倉光球、手塚健太、倉根一郎、浜口功
    • 学会等名
      日本輸血・細胞治療学会
  • [学会発表] HTLV-1定量PCRの標準化のための参照品の作成2018

    • 著者名/発表者名
      倉光球、大隈和、内丸薫、山野嘉久、長谷川寛雄、野坂生郷、岡山昭彦、久保田龍二、佐竹正博、金子典章、渡邉俊樹、浜口功
    • 学会等名
      日本HTLV-1学会
  • [学会発表] HTLV-1/2マルチプレックス核酸検査法の開発と臨床検体を用いた評価2018

    • 著者名/発表者名
      大隈和、倉光球、手塚健太、中村仁美、相良康子、浜口功
    • 学会等名
      日本HTLV-1学会
  • [学会発表] 献血検体から見出された抗体陰性HTLV-1キャリア2018

    • 著者名/発表者名
      相良康子、中村仁美、倉光球、相良康弘、松永克希、平山秀明、島村益弘、岩永正子、大隈和、浜口功、入田和夫
    • 学会等名
      日本HTLV-1学会
  • [学会発表] Highly sensitive detection of plus- and minus-strand HTLV-1 mRNAs by RNA in situ hybridization in a humanized mouse model2018

    • 著者名/発表者名
      Tezuka K, Mizukami T, Sasaki E, Kuramitsu M, Matsuoka S, Okuma K, Hamaguchi I
    • 学会等名
      日本ウイルス学会

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公開日: 2019-12-27  

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