研究課題
HTLV-1感染は主に母乳を介するが、完全人工栄養保育の児でも一部に母子感染が成立している事実から、母乳を介さない感染経路の可能性が指摘されてきた。また、近年では成人においてHTLV-1の水平感染が拡大していることが疫学調査から明らかにされているが、その機序は全く検討されていない状況である。本研究ではこれまでにHTLV-1 RNAをターゲットにしたin situ hybridization(ISH)法を開発し、HTLV-1感染ヒト化マウスを用いて、これまで機序が不明であったHTLV-1の経胎盤感染の可能性を示した。一方で、性交渉を介した水平感染様式解明にあたってはヒト化マウスまたはヒトの組織を用いて解析を行うことは困難である。そこで、HTLV-1と類似の特徴を有するSTLV-1感染ニホンザルを用いて検討した。高齢ザル2頭を用いて生殖器を中心にプロウイルスDNA量(PVL)解析を行った結果、脾臓に加えて子宮や膣において高いPVLが示された。さらに組織学的な解析を行うため、STLV-1 +鎖RNAの共通領域であるtax/rex mRNA 3rd exon、並びに-鎖RNAの共通領域に対する検出用プローブ (pX/SBZ probe) を構築しISH法の確立を行った。感染サル由来脾臓を用いて解析した結果、いずれのプローブにおいてもウイルスRNAが検出され、特にpX probeでは白碑髄上で局所的な強い染色像が観察された。これはSTLV-1を標的とするISH法が機能していること、そして脾臓のリンパ濾胞にリザーバーが存在することを強く示唆している。さらに生殖器を用いた解析を進めた結果、子宮や膣にウイルスRNA陽性細胞が存在することを示唆する結果が得られた。それゆえ、STLV-1感染サルは水平感染様式解明のための動物モデルとして有用であると考えられ、今後さらに解析を進める予定である。
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