研究課題/領域番号 |
18K08385
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
下島 恭弘 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (50436896)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 制御性T細胞 / アンチエイジング / Sirt1 / 全身性血管炎 |
研究実績の概要 |
アンチエイジング蛋白であるサーチュイン遺伝子(Sirt1)を賦活化して、制御機能が障害されている全身性血管炎(ANCA関連血管炎、結節性多発動脈炎)における制御性T細胞(Treg)の回復研究を継続している。 2018年度は、CD4TregにおけるSirt1の発現量と機能障害に関与するエフェクターサイトカインの発現量との相関、またCD8TregにおけるSirt1の発現量と制御機能に寄与するNADPH oxidase(NOX)2の発現との相関の証明(「CD4TregとCD8TregにおけるSirt1と制御因子、炎症性サイトカインの発現に関する解析研究」)を研究計画とし、概ね順調に研究が遂行できた。CD4Tregでは、健常コントロールに比してIFN-γやIL-17などのエフェクターサイトカインが有意に発現する一方でSirt1の発現が低下しており、有意差は得られなかったが両者間に逆相関の傾向が期待された。一方、CD8TregではSirt1およびNox2の発現は明らかに低下していた。Sirt1の活性低下と各々の制御機能に関わる因子との相関関係を明らかにすることはTregの制御機能に関わる分子標的を明確にする重要な研究であり、処理検体の増加を急ぐ。更に2019年度以降からの開始を計画していた「Sirt1の活性化によってTregの制御機能が回復するか検証する研究」にも着手することができた。これはSirt1活性化物質であるレスベラトロールでTregの刺激を行い、Sirt1の活性化によりTregの機能回復に寄与するかを検証する研究である。すなわち、CD4TregではエフェクターT細胞へのシフトがTregとしての機能を障害していると考えているため、エフェクターサイトカインの産生がどれだけ抑制されるかを検証する。またCD8TregではNOX2が制御に関わっているため、その発現の増加を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画していた「CD4TregとCD8TregにおけるSirt1と制御因子、炎症性サイトカインの発現に関する解析研究」が順調に進んだことによる。処理検体数が10検体程度である事からもう少し同研究を継続する必要はあるが、初年度の研究で比較的有意な結果が証明できたため、次の研究で必要となるベースラインのデータが蓄積できた。 本来は次年度予定としていた「Sirt1の活性化によってTregの制御機能が回復するか検証する研究」にも着手しており、前述のベースラインデータを用いて研究の妥当性が検証できている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の「CD4TregとCD8TregにおけるSirt1と制御因子、炎症性サイトカインの発現に関する解析研究」はベースラインとして重要なデータであるため、次の研究を円滑に進めるためにも十分量の検体数処理を並行して行いたい。一方で測定は「Sirt1の活性化によってTregの制御機能が回復するか検証する研究」の手技の一部と同様であるため、並行して研究が進められる利点があり、実験効率は良好であると確信している。また、レスベラトロールで処理する標的細胞を多めに確保し、細胞内制御因子の発現量評価と並行してsuppression assayを行う事で、今年度の研究目標を早めに終了する計画とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度はレスベラトロール処置によるTregの制御因子解析が順調に進み当初の研究計画に比して進展が得られたため、今年度に予定する研究計画の中で、次年度に予定する研究内容の一部を繰り上げで行う事が可能と判断しており、そのための資材購入分を考慮した使用計画となっている。 主には、今年度および次年度施行分のsuppression assayの実験件数が大幅に増加する予定であり、細胞分離試薬およびPCR資材の大量購入が必要になるため、その購入費用として使用する予定である。
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