全身性血管炎患者の末梢血リンパ球を用いた研究。アンチエイジング蛋白であるサーチュイン遺伝子(Sirt1)を賦活化して、制御性T細胞(Treg)の制御機能回復が得られるかを目的として研究を継続した。 2020年度初旬は、2019年度からの継続でCD4陽性Treg(CD4+CD25+FoxP3+細胞)におけるSirt1の発現、エフェクターサイトカイン発現、FoxP3の発現およびTregの制御機能(FACSを用いたsuppression assayによる評価)に関する解析を行った。並行してTreg内に発現する活性酸素(ROS)の発現についても評価を行った。Sirt1活性化物質であるレスベラトロール(RVL)を含有した培養液でTregの刺激培養を行い、Sirt1の活性化によるTreg制御機能回復の検証研究とともに、前述のTreg内に発現する各因子に関しても評価を行った。また、RVLによるTregの培養刺激前後でtotal RNAを抽出し、qPCRで各種サイトカインの転写因子を測定した。結果として、RVLによってTregの制御機能は改善傾向であり、FoxP3の発現も有意に増加傾向であった。mRNAレベルでの制御関連転写因子の発現量には検体によるばらつきが多く一定の見解は得られなかったが、IFN-γの産生は明らかな改善を示した。ROSは健常コントロールに比して明らかに産生が亢進しており、RVLでの培養刺激後は明らかに発現が減少していた。mTORの発現も評価を行ったが、健常コントロールに比してmTORの発現も亢進傾向が示された。一方で、RVLの介入後にmTORの発現も明らかに低下が得られていたことから、ROSの過剰産生やSirt1の活性低下がmTORの発現亢進に関与し、RVLによる抗酸化作用やSirt1の活性化がmTOR制御を介してTregの機能を回復させる傾向に働くことが考慮された。
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