研究課題
本研究は関節リウマチ(RA)の関節修復における滑膜間葉系幹細胞(MSC)の多分化・再生能に視点を置き、RA治療薬の薬理効果プロファイリングを行ってきた。RAの治療に使用されている抗リウマチ薬(メトトレキサート、プレドニゾロン、ヒュミラ、アクテムラなど)を用いて、ヒト滑膜に局在するMSCの多分化能に与える影響を検討した。In vitro実験評価系において、高用量メトトレキサートは脂肪細胞、骨芽細胞、軟骨細胞への誘導分化を抑制することが分かった。プレドニゾロンの投与により、MSCが脂肪細胞への誘導分化が増加し、骨芽細胞におけるアルカリフォスファターゼ活性の誘導に抑える傾向を示した。高用量のプレドニゾロンは骨芽細胞の誘導分化に負の影響を与えるのが明らかになった。TNF阻害剤のヒュミラの投与により、骨芽細胞誘導分化される際のアルカリホスファターゼ活性を低下させる効果が見られたが、軟骨誘導分化に影響がなかった。アクテムラの直接投与は、MSCの骨芽細胞分化能と軟骨細胞分化能を抑制したことが明らかになった。さらに、3次元培養したスフェロイドを用いて構築されるヒト型RAモデルを構築した。このモデルは、現時点で報告されている異種移植RAモデルの中では、ヒトRAの異常免疫微小環境や関節組織(骨・軟骨)の破壊などの病態を最大限度に反映できるモデルである。このモデルを利用し、移植されたMSCの軟骨再生能を評価することができる。Atelloコラーゲン支持材を使用するMSCスフェロイドを軟骨表面に移植することにより、滑膜が軟骨内の侵入を阻止することだけではなく、ダメージを受けている軟骨の表面を再生・修復することを成功した。今後、このモデルを利用し、移植MSCスフェロイドの軟骨再生能を主な評価項目とし、RA治療薬の生体投与がMSCの再生能に及ぼす影響について評価して行く。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画において、RA治療薬が滑膜MSCの多分化能に与える影響(ex vivo)と生体投与により移植MSCの軟骨修復能に及ぼす影響(in vivo)二つの内容が含まれている。現在、MSC多分化能におけるex vivoの評価が終了し、in vivo軟骨誘導分化能の薬効評価システムの構築も完了した。各薬剤の投与を行っており、移植したスフェロイドの評価を着手うしている。課題を計画通り完了させることが可能であると考える。
今後、MSCスフェロイド移植モデルを用いて、Alzetポンプを用いて長期間連続皮下投与を行い、メトトレキサート、プレドニゾロン、ヒュミラ、アクテムラの投与による、MSCの軟骨再生能をin vivo的に評価を行っていく。誘導分化された軟骨様組織の体積、表面マーカー、そして機能性マーカーなどを評価項目として用いる予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
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