研究課題
本研究は、SLEモデルであるMRL/lprマウスの自己抗体産生、腎炎病態形成における脾臓Marginal zone-B(MZ-B)細胞の役割を明らかにすることを目的としている。平成31・令和元年度は、MZ-B細胞欠損型(Mb1-Cre Notch2-flox)MRL/lprマウスの解析を一部進めた。また、抗dsDNA抗体低値のホストマウスにMRL/lprマウス由来のMZ-B細胞を移入する実験を行い、移入後の血清中における抗dsDNA抗体価をモニタリングした。野生型・MZ-B細胞欠損型MRL/lprマウスを用いて、10週齢から24週齢まで2週毎に採血を行い、血清中の抗dsDNA抗体価を調べた。これまでに少数のマウスで得られていた結果と同様に、抗dsDNA IgG抗体価に差は認められなかったが、IgMクラス、IgG3クラスに加え、IgAクラスの抗体について、MZ-B細胞欠損マウスで有意に低値であった。また、同マウスの24週齢における腎を採取して病理染色を行った結果、対象とする野生型マウスでに著明な糸球体病変が認められた個体が含まれていたのに対し、MZ-B細胞欠損マウスでは全ての個体で病変を認めなかった。細胞移入実験では、MRL/lprマウスのMZ-B細胞を、抗dsDNA抗体低値のIFNGR1-KO MRL/lprマウスに移入した。また、レシピエントマウスは細胞移入前にシクロホスファミド処理し、48時間後に細胞移入を行った。その結果、移入マウスでは、細胞懸濁Bufferのみの対象群と比較して、血清中の抗dsDNA IgG抗体価が移入後6週で有意に増加した。以上の結果より、MRL/lprマウスのMZ-B細胞が同マウスの抗dsDNA抗体産生ならびにループス様腎炎病態に関与することが強く示唆された。
3: やや遅れている
平成29年度より当機関動物飼育施設での一時的な飼育数制限が開始し、令和元年度もその状況が継続したため目的解析数を達成できておらず、本研究の進行はやや遅れている。
令和2年度以降は、野生型・MZ-B細胞欠損型MRL/lprマウス間での血清生化学的、病理学的比較を十分な個体数を準備して行っていく。また、MZ-B細胞欠損型MRL/lprマウスをホストとした細胞移入実験、即ちMZ-B細胞の再構築系実験を行うことで、SLEモデルマウスの自己抗体産生、腎炎病態におけるMZ-B細胞の関与をより明確にしていく。これまでの成果を英語論文にて発表する。
動物実験の遅延に伴い、計画した実験が一部達成できていない。令和2年度において、当初予定成果を得ることに加え遅延分を補完し、合算した予算にて研究を遂行する。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
The Journal of Immunology
巻: 203 ページ: 3091-3092
http://dx.doi.org/https://doi.org/10.4049/jimmunol.1901087
巻: 203 ページ: 1411-1416
http://dx.doi.org/10.4049/jimmunol.1900605