研究課題/領域番号 |
18K08393
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
田中 宏幸 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (70264695)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ロイコトリエン / 喘息 / マウス / 拮抗薬 |
研究実績の概要 |
本年度はCysLT2R拮抗薬の、Th2細胞からのIL-5産生、モデルマウスにおける肺局所のTh2細胞ならびにILC2数、ならびにILC2細胞の活性化に及ぼす影響、およびILC2細胞上のCysLT1R ならびに CysLT2R の発現に及ぼす影響をそれぞれ検討した。 (1)Th2細胞からのIL-5産生に及ぼす影響:Th2細胞は感作マウスへの最終ダニ抗原気管内投与 24 時間後、縦隔リンパ節から単細胞浮遊液を回収し、これを抗原刺激し IL-5 産生を評価した。in vitro試験ならびにex vivo試験共に抗原刺激により顕著なIL-5産生が認められた。これに対し、CysLT2R拮抗薬はいずれの場合にもIL-5産生には影響を及ぼさなかった。 (2)抗原刺激後の肺組織におけるTh2 細胞/ILC2細胞の局在の確認と薬物の影響:最終抗原投与 24 時間後に還流肺から肺単細胞浮遊液を得た。両細胞共にそれぞれ細胞数および比率ともにダニ抗原投与群では増加が確認され、CysLT2R拮抗薬はいずれの細胞の細胞数および比率の増加を有意に抑制あるいは抑制する傾向を示した。 (3)2型自然リンパ球(ILC2)の活性化に及ぼす影響: Naive マウスに IL-33 を反復気管内投与し、FACS Aria IIを用いて ILC2 を無菌的に単離し培養した。次いで、得られた ILC2 をCysLTs で刺激した際の IL-13 産生量に及ぼす拮抗薬の影響を検討した。CysLTs刺激によりILC2細胞からはIL-13の産生が観察されたが、この産生はCysLT1R拮抗薬でのみ抑制された。また、ILC2 上の CysLT1R ならびに CysLT2R の発現は同程度であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
いずれの実験も計画通り完了し、【研究実績の概要】で記したとおりの成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度はTh2細胞ならびにILC2細胞の局所集積あるいは免疫応答に重要な気道上皮細胞ならびに樹状細胞に及ぼすCysLTsの作用に焦点を絞り、下記のような実験を行う予定である。 1)気道上皮細胞:Th2依存性ケモカイン産生の抑制(気道上皮細胞株上への両受容体の発現は免疫染色により確認済み) In vivo 実験を模倣し、マウス気道上皮細胞株をIL-13 存在下ダニ抗原で刺激する。この際、LTC4 あるいは LTD4 を添加し、CCL17 (TARC) あるいは CCL22 (MDC) のmRNA 発現を real-time PCR にて検討する(上昇が見られた場合には上清中のサイトカイン量をELISAにより定量する)。ケモカイン産生が見られた場合にはCysLT2R あるいは CysLT1R 拮抗薬を添加し、その影響を検討する。 2)樹状細胞:抗原捕捉ならびに抗原提示 蛍光Alexa fluor 647標識卵白アルブミン (Alexa-OVA) をトレーサーとして、局所に浸潤した樹状細胞の動きを観察する。具体的には、最終ダニ抗原投与時に Alexa-OVA も同時に気管内投与し、 16、24 ならびに 48 時間後の縦隔リンパ節を回収し、Alexa-OVA+ CD11c+ MHCII+ CD103+ あるいは Alexa-OVA+ CD11c+ MHCII+ CD11b+ 細胞の増減を FACS verse にて解析する。差が認められた場合には、CysLT2R あるいは CysLT1R 拮抗薬を投与し、その影響を検討する。また、DCs 上の CysLT1R ならびに CysLT2R の発現も同時に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は予想外に実験が順調に進み、当初、基礎検討を行う予定であった動物実験および試薬にかかる支出が減額となり、全体としては繰越金が生じた。 本年度はこの資金を利用して、気道上皮細胞の培養において培地中で培養する実験系以外にair-liquid interface法と呼ばれる新たな培養系を確立し、実際に気道上皮細胞の先端部が空気に触れるような培養系と従来法との成績の差についても検討していく予定である。 本実験系の導入にかかる費用として、今回生じた差額を使用していく予定である。具体的にはマウス気道から気道上皮細胞を採取し、一定期間、培地内で培養後、気液平衡が生ずる特殊培養ディッシュを用いて培養を行い、気液平衡の確認には経上皮抵抗値を測定する。抵抗値が上昇し、一定レベルを超えて維持された場合に上皮間バリアの形成が確立されたものとして実験に供する予定である。
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