最終年度はマウス気道上皮細胞のair-liquid-interface法の確立および実験実施を目指した。種々の方法を検討したが、残念ながらair-liquid-interface法の確立が十分ではなく、培養条件の不安定さから、CysLTsのリガンド刺激および拮抗薬の評価に適する培養条件を見いだすことはできなかった。 そこで、研究の方向性を変更し、昨年度の重要な知見である気道上皮細胞株からのLTC4刺激による樹状細胞に対するケモカインCCL20の産生亢進に着目し、マウス喘息モデルにおいて抗原曝露後の気管支肺胞洗浄液(BALF)中においてCCL20の上昇が見られるか否か、さらに肺局所において、抗原曝露後に増加が見られたCD11c+MHCII+CD11b+CD103-樹状細胞の遊走に関与するケモカインであるCCL17ならびにCCL22の産生量も合わせて測定し、CysLT2Rのアレルギー性気道炎症における意義をCysLT1Rと比較検討した。 その結果、マウス喘息モデルではCCL20、CCL17およびCCL22のいずれも抗原曝露後にBALF中で有意な増加が観察され、これらの増加をCysLT1R拮抗薬のモンテルカストならびにCysLT1R拮抗薬は有意に抑制した。 したがって、CysLT2Rは抗原曝露による気道炎症において、ILC2の局所への集積ならびにTh2細胞の集積に寄与することが示唆された。一方、CysLT1RはILC2の局所集積およびIL-13などのTh2サイトカイン産生、ならびにTh2細胞の集積に関与することが明らかとなった。以上の成績は、CysLTsの喘息病態への関与を明らかにする上で重要な知見であるばかりでなく、新規喘息治療薬の創薬、例えばCysLT1RならびにCysLT2Rのdual antagonistの創製、において極めて有意義な成果であると思われる。
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