研究課題/領域番号 |
18K08394
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研究機関 | 北海道科学大学 |
研究代表者 |
江川 祥子 (岩城祥子) 北海道科学大学, 薬学部, 教授 (40192504)
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研究分担者 |
伊藤 萌子 北海道科学大学, 薬学部, 講師 (60711827)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Werner症候群 / アデノシンデアミナーゼ / ADA / ADA2 / アイソザイム |
研究実績の概要 |
Werner症候群(WS)は、代表的な遺伝性早老症であり、血中に炎症性タンパク質が増加していることから、WSの病態が慢性炎症を基盤とすることが示唆されている。一方、プリンヌクレオチド代謝酵素として知られるアデノシンデアミナーゼ(以下ADA)にはADA1とADA2のアイソザイムが存在し、健常人血中のADA活性はADA2が60%から70%を占めている。また、ADA2欠損症は全身性の炎症や血管障害に関する劣性遺伝性自己炎症疾患であることが近年明らかとなった。本研究では、共に炎症に関与するWSとADA2欠損症の病態解明に寄与することを目的として、WS患者血中のADAアイソザイムを明らかにするとともに、ADA2のタンパク質としての機能解析を行っている。 1)健常人において、ADA2活性は老齢になるに従い上昇していた。WS患者血中の全ADAおよびADA2活性は同年代の健常人中年層と有意差を示し、逆に老年層とは有意差を示さなかった。これはすでに我々がWS患者で報告しているように、炎症マーカーである高感度CRPと同じ挙動を示すものであった。 2)ADA2の活性化がどの様に調節されているのかは十分にはわかっていないが、今回、我々はADA2の生合成過程におけるN-グリコシル化の役割について明らかにした。グリコシル化阻害剤や部位特異的変異の導入によって、細胞内ADA2活性は著しく減少し、かつホモダイマー化や細胞外への分泌が減少していた。このことは、N-グリコシル化がADA2の活性構造の形成や分泌に関与していることを示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)WS患者血中のADA活性の測定並びに健常者血中のADA活性測定が終了し、現在、他の炎症性マーカーや各種サイトカインも含めてADAとの相関性等について統計解析を進めている。WS患者血中のADAアイソザイムの存在比率や、健常者においても0歳 - 100歳までの幅広い年齢層でのADAアイソザイムについての報告例はない。また本研究内容の一部について、学会発表した。 2)ADA2の活性化がどの様に調節されているかは十分にはわかっていないが、今回、我々はADA2の生合成過程におけるN-グリコシル化の役割について明らかにした。グリコシル化阻害剤や部位特異的変異の導入によって、細胞内ADA2活性は著しく減少し、かつホモダイマー化や細胞外への分泌が減少していた。このことは、N-グリコシル化がADA2の活性構造の形成や分泌を促していることを示すものである。この研究結果については、論文投稿準備が進んでいる。 一方、ADA2定量法の開発については、現在、種々の条件を検討している段階であり、結果がまだ得られていない状況にあり、マイナスポイントとしてあげられる。全体としては、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、1)WS患者血中のADA活性の測定並びに健常者血中のADA活性測定が終了したことから、まだ測定し切れていない他の炎症性マーカーや各種サイトカインの測定を行うとともに、ADAとの関連性について統計解析をすすめ、論文投稿に結びつける。 2)ADA2の糖鎖解析については、現在、追加実験を行うとともに、論文化を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定であった試薬が生産中止となり、代替品を年度内に探すことができなかったために、繰り越しとなった。現在、いくつかの候補となる代替品を用いて実験条件の検討を実施している。
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