研究課題/領域番号 |
18K08397
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
田村 直人 順天堂大学, 医学部, 教授 (20227284)
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研究分担者 |
多田 久里守 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70424249)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脊椎関節炎 / 体軸性関節 / IL-22 / 骨新生 / 靭帯骨化 / モデルマウス / 骨粗鬆症 / 治療 |
研究実績の概要 |
本研究では、体軸性脊椎関節炎(axSpA)の骨新生に関してを行う.AxSpAは、体軸関節の炎症とそれに引き続く骨新生による不可逆的な関節強直を主病態する難治性疾患である。一方で、病変周囲の椎体骨自体では骨粗鬆症が著しく、骨折リスクが高いことが問題である。SpAにおいてはIL-23/IL-17経路が病態に強く関与することが知られ、IL-22が骨新生に関与している可能性が報告されている。そこで本年度、申請者らはIL-22阻害が脊椎関節炎の骨新生を抑制するかを検証するため、申請者らは脊椎関節炎モデルマウスにおいてIL-22を阻害し、骨新生抑制の有無について病理学的に検討した。しかし、IL-22阻害による明らかな骨新生の抑制は認められなかった。このことから、IL-22を単独で阻害するだけでは靭帯骨化は抑えられず、IL-17などの他のサイトカインの関与が強いことが考えられた。よってIL-17とIL-22の両者を阻害し、実臨床で使用可能となったIL-17阻害単独と比較検討することを現在、考慮中である。いずれにせよ、現時点では骨新生の進行を抑制することが明らかな薬剤はないため、分子標的治療の可能性をさらに検討していく必要があると考えられる。 また、破骨細胞分化抑制作用を有する抗RANKL抗体が骨粗鬆症のみならず関節リウマチの治療薬としても使用されている。AxSpAも炎症とびらん性病変がまずみれられることから抗RANKL抗体は、初期には骨破壊抑制、またその後の骨粗鬆症抑制において有用である可能性が高い。しかし椎体間の靭帯骨化を増強する可能性も危惧され、臨床でもまとまった研究はされていない。さらに抗sclerostin抗体が骨粗鬆症に使用可能となり、これらの薬剤のSpAにおける骨新生に与える影響について検討することは臨床的な意味でも重要と考えられ、次年度に研究を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脊椎関節炎モデルマウスについて、病理学的スコアの検討および確認を行った。 同マウスに抗IL-22モノクローナル抗体もしくはコントロールIgGを投与し、ヘマトキシリン・エオジン、アリザリン・レッドS、およびアリシアン・ブルーにて染色を行い、病理スコアを用いて比較検討した。抗IL-22抗体投与マウスにおいて、炎症や骨新生についてコントロール群と比較して差はみられず、当初、予測していた骨新生抑制作用は認められなかった。血液は投与前、6週、16週で採取したが、血清の炎症性サイトカインや骨代謝マーカーについては、現時点では測定しておらず検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
脊椎関節炎モデルマウスにおける骨新生抑制について、IL-22阻害単独では効果が得られなかったため、IL-17阻害を同時に行い、IL-17単独阻害と比較検討することを考慮中である。 また、破骨細胞形成抑制作用を有する骨粗鬆症治療薬の病的骨新生に対する影響の有無について検討するため、抗RNAKL抗体1mg/kg を1回、抗sclerostin抗体5mg/kgを4週毎に投与する。16週でマウスの解剖を行い脊椎の病理標本を作製する。凍結切片を保存する。PG投与前、6週(最終投与時)、16週の血液を採取し保存する。 国際学会などに積極的に参加し、他の研究者からも情報を入手する。
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