研究実績の概要 |
【背景】SH3BP2(SH3 binding protein2)は免疫細胞に広く発現するアダプター蛋白で、Syk等の細胞内シグナル伝達を調節する。自己免疫性疾患での役割は明らかでなく、今回、全身性エリテマトーデス(SLE)モデルマウスを用い、自己免疫現象・病変形成に及ぼす影響を検討した。【方法】SLEモデルとしてFaslpr マウスを用い、SH3BP2 欠損Faslprマウスを作成し、35 週齢時に脾腫、抗dsDNA 抗体、リウマトイド因子、腎組織、免疫細胞サブセットの解析を行った。また、B 細胞特異的SH3BP2 欠損Faslprマウスを作成し、表現型解析を行った。 【結果】Faslpr マウスで見られる脾腫、自己抗体上昇、増殖性糸球体病変は、SH3BP2欠損により有意に軽減した。更に、Faslprマウスで増加していた脾臓の CD3+B220+CD4-CD8-T 細胞、活性化CD4+T細胞も、SH3BP2欠損により有意に低下した。B 細胞特異的SH3BP2 欠損では、免疫異常・組織障害の改善は認めなかっ た。SH3BP2欠損マウスの骨髄細胞を用い樹状細胞分化を評価したところ、GM-CSF・IL-4刺激下での樹状細胞分化/活性化がSH3BP2欠損により抑制された。 【結論】SH3BP2 欠損は、SLEマウスの自己抗体産生、異常T細胞増加を軽減し、臓器障害を抑制した。SH3BP2欠損は樹状細胞分化・活性化抑制を介しSLE様病変を改善すると考えられた。 研究成果は、以下の雑誌に発表した。Int J Mol Sci 2021 Apr 17;22(8):4169. doi: 10.3390/ijms22084169. SH3BP2 Deficiency Ameliorates Murine Systemic Lupus Erythematosus. Kawahara K, Mukai T, Iseki M, Nagasu A, Nagasu H, Akagi T, Tsuji S, Hiramatsu-Asano S, Ueki Y, Ishihara K, Kashihara N, Morita Y.
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