研究課題/領域番号 |
18K08399
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(大阪南医療センター臨床研究部) |
研究代表者 |
大島 至郎 独立行政法人国立病院機構(大阪南医療センター臨床研究部), その他部局等, 部長 (50362728)
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研究分担者 |
和田 芳直 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), その他部局等, 医師 (00250340)
大海 雄介 中部大学, 生命健康科学部, 助手 (10584758)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / 糖鎖異常 / シアル酸 |
研究実績の概要 |
研究実施計画に記載した3つの課題について以下記載する。 ① 免疫グロブリンG(IgG)における糖鎖異常 シアル酸欠損(S0)の疾患マーカーとしての有用性 についての検討:現在未治療の早期関節炎、健常者 計41検体の解析を終え、S0の早期診断マーカーとしての有用性を確認している。今後さらに検体数を増やして解析を行う予定である。さらに免疫学的寛解のマーカーとしての有用性の検討に関しては、分子標的治療薬の治療により寛解を達成した症例の検体のIgG糖鎖解析を行い、その後1年間の観察研究をする予定であり、検体を充分に確保するための当院を含めた体制は構築した。 ② 病態への関与のメカニズムの研究:シアル酸転移酵素を強発現させたB細胞と欠損させたB細胞由来のIgGを用いて滑膜細胞や免疫担当細胞の機能に及ぼす影響について検討する。まず今年度はガラクトース、シアル酸を欠損したB細胞に、ガラクトースおよびシアル酸を発現させるために、ガラクトース転移酵素とシアル酸転移酵素をトランスフェクションさせたB細胞の作製に着手した。シアル酸付加のためのシアル酸転移酵素遺伝子の導入そのものは問題なく行われたが、当初うまくシアル酸まで伸長しなかった。問題点として、転移酵素にmouseのST6gal1とB4galt1を使用しているが、それがうまく働かなかった可能性があり、Humanの遺伝子を作り直して、もう一度検討する必要があると考えて再度方法を変えてトランスフェクションを行った。その結果、本年4月にシアル酸の付加率が上昇し、実験可能と考えられる細胞株の作成に成功している。 ③ 病因への関与についての研究:こちらについては、本年4月までガラクトースおよびシアル酸を高発現したIgGを産生するB細胞株の作製が未完成でもあったこともあり、今年度は未着手で次年度以降推進していく予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ガラクトースおよびシアル酸を強発現した糖鎖構造を有するIgGを産生させるために、ガラクトース転移酵素とシアル酸転移酵素をトランスフェクションさせたB細胞の作製に着手した。トランスフェクションそのものは問題なく行われたが、当初ガラクトースおよびシアル酸の付加率が期待されたほど高くなかったため、再度方法を変えてトランスフェクションを行った。(本年4月に上記付加率について十分な細胞株の作成に成功している。)また、母子医療センターの質量分析装置の部品の交換を余儀なくされメンテナンスの期間が必要であった。これに関しては現在復旧している。 今後の実験の体制、検体の収集体制に関しては特に問題ないと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画に記載した3つの課題について以下記載する。 ① 免疫グロブリンG(IgG)における糖鎖異常 シアル酸欠損(S0)の疾患マーカーとしての有用性 についての検討:現在41検体の解析を終え今後さらに検体数を増やして解析を行う予定。この部門の検体はすでに十分に確保されており、今後順次測定を進める。さらに免疫学的寛解のマーカーの有用性の検討に関しては、検体を充分に確保するために当院を含めた体制は構築できた。今後分子標的薬治療により臨床的寛解に至った症例について血清IgG糖鎖解析を行ったうえで1年間の臨床的観察を行い、再燃群と寛解維持群で免疫学的な寛解のマーカーとなるかを検討する。 ② 病態への関与のメカニズムの研究:シアル酸を欠損したB細胞株に、ガラクトース転移酵素とシアル酸転移酵素をトランスフェクションさせ、ガラクトースおよびシアル酸を高発現したIgGを産生するB細胞株の作製が出来た。今後シアル酸転移酵素を発現させたB細胞と欠損したB細胞由来のIgGを用いて滑膜細胞や免疫担当細胞の機能に及ぼす影響について検討する。材料は揃ったため今後の研究推進に問題は無い。 次年度以降は③を並行して進める ③ 病因への関与についての研究:シアル酸欠損が起こる原因の解明として腸内細菌と関節滑膜におけるシアリダーゼの活性を検討する。シアル酸欠損/ガラクトース欠損が自己抗体の誘導への関与についての研究:今回得られたガラクトース、シアル酸を高発現したIgGを産生するB細胞株と、ガラクトース、シアル酸を欠損したIgGを産生する細胞株においてそれぞれMHC ClassIIを強制発現させ、細胞表面でのIgGとの結合能を質量分析を用いて検討結合能を比較検討し、糖鎖異常の認められるIgGがいわゆるネオセルフの抗原となるのかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
質量分析装置の一部部品の取り換え含めたメンテナンスを要したため、測定できる検体が初年度は予定より少なかった。現在復旧しており、今後問題なく測定できるものと考えられる。 また、ガラクトース転移酵素とシアル酸転移酵素をトランスフェクションさせたB細胞の作製に技術的な問題が生じ、再作成を余儀なくされた。これに時間がかかったため、当初の予定より少し遅れてin vitroの実験を開始する事になった。 結果として上記細胞株は本年4月に完成しており、これを用いた初年度に予定していたシアル酸転移酵素を発現させたB細胞と欠損したB細胞由来のIgGを用いて滑膜細胞や免疫担当細胞の機能に及ぼす影響についての検討を今後開始する。
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