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2019 年度 実施状況報告書

全身性エリテマトーデスにおけるSOCS1の役割の解明と治療への応用

研究課題

研究課題/領域番号 18K08400
研究機関公益財団法人田附興風会

研究代表者

高橋 令子  公益財団法人田附興風会, 医学研究所 第4研究部, 研究員 (90422120)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードSOCS1 / サイトカイン / 制御性T細胞 / SLE
研究実績の概要

本研究では、免疫寛容に重要な役割を担うJAK-STATサイトカインシグナル制御分子であるsuppressors of cytokine signaling (SOCS) 1の発現動態と全身性エリテマトーデス(SLE)の病態の関係の解明を目的とする。
昨年は、SLE病態における治療薬による病態改善と、その改善への過程における制御(抑制)の本質を明確にすることを試みた。ステロイドとメチル化酵素阻害薬アザシチヂン投与によって検討し、SLEの病態の改善とは「抑制」というよりはむしろ、免疫学的変化の平衡状態が保たれることである可能性が示唆された。その中心的役割を担う分子の一つがSOCS1であると仮定して、実験をさらに進めた。
制御性T細胞(Treg)の可塑性の亢進(Foxp3発現の低下,抑制機能の低下とサイトカイン産生性細胞への変化)によって、T細胞特異的SOCS1欠損マウスはSLEの病態を呈することを筆者は既に発表している。今度は、SOCS1トランスジェニックマウス(SOCS1 Tg)において、SLE病態が抑制されるかを検討した。SOCS1 TgにおいてSLE病態は抑制されず、対照と比べてむしろ増悪した。フローサイトメトリーでの解析にて、対照と比較してSLEを誘導したSOCS1 Tgにおいて、脾臓とリンパ節のCD4陽性T細胞からのIL-2産生細胞の減少とIFNgamma産生細胞の増加する一方で、Foxp3陽性細胞は増加していた。
SOCS1ノックアウトマウスとトランスジェニックマウスの結果から、SOCS1は恒常的に高発現でも低発現でもSLEが増悪した。また、その両者の機序にTregの抑制機能低下が関与する可能性が示唆された。免疫学的変化の平衡状態の観点の重要性が仮定され、SLE病態でのSOCS1発現の継時的変化について、患者検体を含めて、さらに詳細に検討し理解することが重要である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

1)予想に反して、SOCS1トランスジェニックマウス結果が、SLE病態を抑制しないという結果であった。Tregの抑制能など、その機序を現在解明中である。
2)SOCS1の「発現の継時的変化」という観点から、マウスとヒト検体ともに、「時系列」での解析を重視している。そのために、サンプル収集に時間を要している。

今後の研究の推進方策

1)マウスの実験では、当初の仮定には反したが、SOCS1は恒常的に高発現でも低発現でもSLEが増悪し、SLEでのSOCS1の「発現の継時的変化」の理解の重要性が高まった。時系列での変化の解析を続けるとともに、SLE病態においてSOCS1の発現を支配する機序とSOCS1の変化がSLE病態に及ぼす役割を解明する。
2)上記マウスの結果を元に、ヒト検体を用いた研究でもSOCS1の発現動態観察を重視する。SLE患者末梢血リンパ球でのSOCS1の発現量をreal time PCR法にて、治療前後など時系列で解析する。SLE病態の変化や治療状態(免疫学的検査結果(DNA抗体価、補体値)、臓器病変の種類、内服薬の種類・投与量など)とSOCS1の発現の比較を施行する。加えて、SLE患者の皮膚、腎臓の生検組織を用いて、のSOCS1の発現を免疫染色にて解析する。典型的なSLE患者の組織は採取し保存済みである。これらの結果にて、SLE病態でのSOCS1の関与、役割を明らかにし、SOCS1制御がSLEの病態制御となる可能性について考察する。

次年度使用額が生じた理由

今年も特に、ヒト検体を用いた実験のための抗体(フローサイトメトリー、免疫染色など)、real time PCRの試薬などの購入に用いて、遅延分の実験を精力的に進める。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] SOCS1 (suppressor of cytokine signaling 1)のSLE病態における役割2020

    • 著者名/発表者名
      高橋令子, 井村嘉孝
    • 学会等名
      第64回日本リウマチ学会総会

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公開日: 2021-01-27  

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