研究課題/領域番号 |
18K08400
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研究機関 | 公益財団法人田附興風会 |
研究代表者 |
高橋 令子 公益財団法人田附興風会, 医学研究所 炎症・免疫研究部, 主任研究員 (90422120)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | SOCS1 / リンパ球減少 / 制御性T細胞 / SLE |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、JAK-STATシグナル制御因子であるsuppressors of cytokine signalling (SOCS) 1の発現の経時的変化と、全身性エリテマトーデス(SLE)の病態への関与について検討することである。我々は、T細胞または制御性Treg(Treg)特異的SOCS1欠損マウスのTregは、Treg可塑性の増加による抑制能の低下を示すことから、SOCS1がTreg安定化に関与していることを示してきた。しかし、T細胞特異的SOCS1トランスジェニック(SOCS1 Tg)マウスにSLE病態を誘導してもその病態は増悪することから、SOCS1 Tgマウス、すなわちSOCS1過剰発現状態においてSLEの病態を悪化させる機序の解明を試みた。SLE病態を誘導するために、8週齢の雌の野生型(WT)マウスまたはSOCS1 Tgマウスの耳に、既報のように8週間まで隔日でイミキモドクリームを投与した。SOCS1 Tgマウス由来のTregは、WTマウス由来のTregよりも抑制能が強く、炎症状態下でも可塑性の防御を伴って安定であった。しかしながら、SOCS1 Tgマウス由来のnon-Treg、すなわちCD4+CD25- effector細胞は、IL-17Aなどのサイトカイン産生を伴って活性化して減少を示し、SLE病態の惹起でそれらが強調された。SOCS1 Tgマウス由来のeffector細胞の減少は、細胞分裂は変化を認めなかったが、細胞生存とアポトーシスの亢進を認めた。 SOCS1はCD4陽性T細胞で持続的なダウンレギュレートでもアップレギュレートでも、それぞれ別の機序でSLEの病態を増悪することが解明された。SOCS1の発現調整と免疫システムの制御についてさらに解明を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
患者検体で経時的なSOCS1発現変化を解析しているが、COVID-19流行により予定よりも時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
SOCS1トランスジェニックマウスの解析結果から、SOCS1が持続的に過剰発現してもSLEが増悪することが解明された。これらの結果から、SLEにおける「SOCS1のダイナミクス」の解明を進める。 それらのダイナミクスを支配する因子の同定を進めるが、特に患者検体でSOCS1発現制御機構に関して解明を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
SOCS1の持続的過剰発現でSLE病態がむしろ増悪し、当初の仮定と異なる機序の解明に時間を要したが、結果がまとまりつつある。COVID-19の流行によって、特にヒト検体の収集と実験に遅延が生じたが、これらの結果を基に、SOCS1ダイナミクスの破綻によるSLE発症機序の解明を進める。今後特に、ヒト検体解析にてこれらの結果の解明を進めるために、フローサイトメトリー、免疫染色などの抗体、real time PCRの試薬の消耗品の購入などに充てる。
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