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2019 年度 実施状況報告書

強皮症の皮膚潰瘍に対する体外衝撃波療法の分子的機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K08401
研究機関東北大学

研究代表者

藤井 博司  東北大学, 医学系研究科, 准教授 (30531321)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード強皮症 / 皮膚潰瘍 / 体外衝撃波 / FosB / 血管新生
研究実績の概要

全身性強皮症に合併する指尖潰瘍は時に難治性である。血管拡張薬などがその治療に用いられているがその効果は限定的である。体外衝撃波療法は生体に血管新生効果をもたらし、筋炎、創傷治癒や虚血性心病変に応用されてきている。本研究では、皮膚細胞への体外衝撃波照射による分子レベルでの応答反応とその機序を明らかにする。この分子レベルでの機序が解明されることにより、強皮症における難治性皮膚潰瘍のより効果的な治療法の開発につながることが期待される。まずはin vitroの系にて衝撃波照射により誘導される遺伝子群の解析を行い、その結果をもとにin vivoの創傷治癒モデルを用いて新たな治療法の開発を目標とした。
アガロースゲルとスライドガラス上で培養した皮膚血管内皮細胞、皮膚繊維芽細胞、ケラチノサイトに体外衝撃波を照射することにより、再現性のある遺伝子変化を解析できる系を樹立した。マイクロアレイによる網羅的遺伝子解析により、転写因子FosBの上昇が確認され、PCR、免疫染色でも体外衝撃波照射後の細胞にFosBが誘導されていることを確認した。マイクロアレイ上では認められなかったが、衝撃波照射後の細胞に血清を添加することにより、FosBにより転写誘導されるCXCL1, CXCL2の誘導が認められた。これらのケモカインは血管新生を誘導することが知られている。In vitroの実験結果から、体外衝撃波照射により誘導されるFosB-CXCL1/CXCL2-angiogenesis axisが創傷治癒の促進に寄与していると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の目的であった、①in vitroにおける体外衝撃波照射系の確立、② ①の系を利用した衝撃波照射後の遺伝子変化に重要な転写因子(master regulator)の同定、については、FosBという転写因子を候補遺伝子として選定でき、FosBの過剰発現により血管新生に関与する液性因子の誘導まで確認できた。今後は、③モデルマウスを用いた体外衝撃波照射による創傷治癒効果におけるFosBの役割、④FosBを標的とした新たな創傷治療法の開発を目指すことになるが、今年度まででその準備段階には十分到達できたと考える。
想定外の事項として、マウスの皮膚に体外衝撃波を照射する際、剃毛処理にてFosBが上昇することも確認したが、剃毛後、24時間経過してから体外衝撃波を照射し、衝撃波プローブをあてるのみの、shamコントロール群と比較することにより解決する見込みである。

今後の研究の推進方策

本年度以降は、既に入手、繁殖済みであるFosBノックアウトマウスを用いて、衝撃波照射に対する遺伝子反応応答解析、衝撃波照射による創傷治癒促進効果におけるFosBの役割、について解析する。
#1 FosBノックアウトマウスを用いた衝撃波照射に対する遺伝子応答解析:(1) コントロール, 衝撃波未照射、(2) FosB遺伝子欠損, 衝撃波未照射、(3)コントロール, 衝撃波照射、(4) FosB遺伝子欠損, 衝撃波照射、の4群における皮膚組織の遺伝子発現変化をマイクロアレイにて解析する。
#2 衝撃波照射による創傷治癒促進効果におけるFosBの役割:マウスの背部に生検針にて直径6mmの創傷を作り、(1) コントロール, 衝撃波未照射、(2) FosB遺伝子欠損, 衝撃波未照射、(3)コントロール, 衝撃波照射、(4) FosB遺伝子欠損, 衝撃波照射の4群における創傷治癒を解析、比較する。また、ブレオマイシン投与による強皮症モデルマウスも用いて同様の実験を行い、特に強皮症における創傷治癒の効果も検証する。
#3 細胞内cAMP上昇による効果的な体外衝撃波療法の開発:ホスホジエステラーゼ4阻害剤であるアプレミラストをマウスに投与することにより、衝撃波照射後のFosBの上昇、創傷治癒における効果について検証する。

次年度使用額が生じた理由

効率的に実験を遂行することが出来たため、次年度使用が発生した。残額は衝撃波照射に伴う皮膚組織の遺伝子発現解析の研究に関する費用に充 てる予定である。

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公開日: 2021-01-27  

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