全身性強皮症に合併する指尖潰瘍は微小血管の線維化に伴う虚血により引き起こされ、時に難治性となる。種々の薬剤の治療効果は限定的であり、新たな発想に基づく新規治療法の開発を要する。皮膚細胞において、衝撃波照射により創傷治癒改善効果の機序を解明することにより、強皮症皮膚潰瘍における新たな治療戦略の開発につながる。本研究では、衝撃波照射後早期に活性化される転写因子、それに引き続く液性因子の発現誘導、に焦点を当てることにより皮膚構成細胞における衝撃波照射に対する遺伝子応答反応と創傷治癒効果の機序を解明する。衝撃波照射方法を用いて、衝撃波未照射と衝撃波照射)2時間後の皮膚微小血管内皮細胞の mRNAの発現量の変化をマイクロアレイにて解析した。2個の遺伝子が2倍以上の上昇、19個の遺伝子が0.5倍以下の低下を示した。AP-1の構成因子であるFosBは転写因子として作用する可能性があり、10倍以上の上昇を示していた。ラットの大腿部に衝撃波照射後の遺伝子変化をマイクロアレイにて解析した。FosBが照射後0.5時間では著明に上昇していた(66.3倍)。IPAによるupregulator解析では、照射後0.5時間でPMAにより誘導される遺伝子セットと有意な相関が認められた。0.5時間後ではangiogenic chemokineであるCXCL2が著明な上昇を来していた(42.0倍)。FosBの強制発現により遺伝子変化の検証を行った。FosB遺伝子を強制発現させたのみではCXCL2、VEGFAの有意な上昇は認められなかったが、PMA共刺激下では、CXCL2、VEGFA共に有意な上昇を認めた。VEGFAに比し、CXCL2は著明な上昇率を示した。本研究により、衝撃波照射により誘導されるFOSB-CXCL2が創傷治癒に寄与している可能性が示唆され、今後治療効果促進の戦略となる可能性がある。
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