研究課題
ハウスダストマイト(HDM;House dust mite)は含有するプロテアーゼにより、気道上皮細胞を直接傷害し、バリア機能を破綻させ、免疫反応の連鎖を惹起することで気管支喘息の発症を誘導する。このような気道炎症下では、気道上皮細胞自身の破壊、細胞呼吸、乳酸産生によってプロトン(H+)が産生され、炎症局所の酸性化が進む。この酸性環境が気道炎症を増悪すると考えられているが、その詳細な分子機構は不明である。これまで、申請者らはプロトンを感知するG蛋白質共役受容体OGR1 ; Ovarian cancer G protein coupled Receptor 1を同定し、気道上皮細胞に高発現することを発見している。本研究ではOGR1が酸性環境である気道炎症下で喘息の発症、進展にどのように関わっているのかを作成したOGR1欠損マウスを用いて追究し、気管支喘息における新規標的としてのOGR1の可能性を評価する。気道上皮細胞を直接傷害するハウスダストマイト(house dust mite: HDM)懸濁液を麻酔下でマウスに点鼻し、(day0-2,day14-17)気管支喘息モデルを作成した。 野生型マウスでは肺胞洗浄液中の好酸球、リンパ球、好中球の増多を認めたが、OGR1欠損マウスでは野生型マウスと比較すると、肺胞洗浄液中の総細胞数、好酸 球数の有意な減少をきたした。 このことから、OGR1欠損マウスでは気道炎症が抑制されることが示唆された。また、肺胞洗浄液中のTh2系サイトカイン産生もOGR1欠損マウスでは抑制されていることがわかった。
4: 遅れている
2019年3月27日に第2子を出産し、その後半年間の育児休暇を取得した。その後、職場復帰したが、思うように実験を進められず、当初の予定の実験を遂行することができなかった。
産前産後の休暇、育児休業の取得又は海外における研究滞在等に伴う補助事業期間延長承認申請書を提出した。プロトンの代わりに金属イオンを用いることで、培養液のpHを調節する必要がなく、OGR1の機能解析が可能になった。また、マウス気道上皮細胞の単離培養は困難であるため、ヒト正常気道上皮細胞 (NHBEc : Normal human bronchial epithelial cells)を Air liquid interface: ALI 法を用いて培養し、金属イオンを加え、産生されるIL-33, IL-25, TSLPなどをELISA法で解析することを進めていく。OGR1欠損マウスから得た肺組織の解析結果から、気道上皮以外にも免疫性細胞であるマクロファージやリンパ球の働きも重要であると考えられるため、マウスの肺組織からこれらの細胞を単離し、サイトカイン、ケモカインの産生にOGR1がどのように関与しているかを解析する。
出産と育児休暇取得のため研究を中断せざるを得なかったので、補助機関の延長申請を提出した。そのため、使用できなかった助成金を次年度に繰り越した。気道上皮細胞の液体培地培養のための試薬、サイトカイン、ケモカインの測定目的に実施するELISA解析の試薬などを購入する予定である。また、in vivo解析を引き続き行なうため、必要なマウスを購入する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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