研究課題
ハウスダストマイトはプロテアーゼを含有しており、気道上皮細胞を直接傷害し、バリア機能を破綻させ、免疫反応の連鎖を惹起する ことで気管支喘息の発症を誘導する。このような気道炎症下では、気道上皮細胞自身の破壊、細胞呼吸、乳酸産生によってプロトン(H+)が産生され、炎症局所 の酸性化が進む。この酸性環境が気道炎症を増悪すると考えられているが、その詳細な分子機構は不明である。これまで、申請者らはプロトンを感知するG蛋白質共役受容体OGR1 ; Ovarian cancer G protein coupled Receptor 1を同定し、気道上皮細胞に高発現することを発見している。本研究ではOGR1が酸性環境であ る気道炎症下で喘息の発症、進展にどのように関わっているのかを作成したOGR1欠損マウスを用いて追究し、気管支喘息における新規標的としてのOGR1の可能性を評価することを目的として研究を進めてきた。気道上皮細胞を直接傷害するハウスダストマイト懸濁液を麻酔下でマウスに点鼻し、(day0-2,day14-17)気管支喘息モデル を作成した。最終ハウスダスト点鼻24時間後に傍気管リンパ節を採取し、樹状細胞の表面マーカーをmRNAレベルで解析したところ、OGR1欠損マウスで抗原提示に重要な役割を果たすCD86の発現が抑制されていることがわかった。このことにより、Th2系免疫機構にOGR1が関与している可能性が示唆され、樹状細胞に発現するOGR1が抗原提示能に関与している可能性がある。
3: やや遅れている
樹状細胞、気道上皮細胞を用いて、細胞外プロトンによる気道炎症の変化を解析したいが、細胞外のpHを安定化させることが困難であり、解析に遅れが生じている。
金属イオンの一部がOGR1のagonist, antagonistとして作用することが報告されており、それらを用いて、細胞外プロトンと免疫機構との関係を明らかにしていきたい。
コロナ禍で研究時間が制限されたことにより、研究に遅れが認められた。また、学会活動なども制限され、旅費を使用しなかった。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)
The Journal of Organic Chemistry
巻: 85(21) ページ: 14190-14200
10.1021/acs.joc.0c01701