研究課題
1.関節リウマチ滑膜細胞(RA-FLS)に対して、RORα阻害剤SR1001、REV-ERBα促進剤GSK4112 、 CBP/p300阻害剤C646で前処理の後、TNFαで刺激した。同様に、RNA干渉を用いて滑膜細胞のCBPとp300遺伝子の発現を抑制し、TNFαで刺激した。その後、各群の細胞内CCL2 mRNA発現量(qPCR法)と培養上清CCL2(ELISA法) を定量した。その結果、TNFα誘導性CCL2発現は、SR1001/ GSK4112両剤の同時処理によって抑制された。同様に、C646処理群やCBP/p300発現を抑制した群においてもTNFα刺激によるCCL2発現増加は抑制された。これによって、RA滑膜細胞におけるTNFα誘導性CCL2発現増加は、転写因子RORα/REV-ERBαとヒストンアセチル化酵素CBP/p300を介していることが示唆された。2.RA-FLSにBmal1 siRNAを導入後、50 %ウマ血清DMEMを用いて時計遺伝子発現を同期した。さらに無血清DMEM培養下に32 時間まで経時的にRNA抽出を行い、定量PCR法を用いて細胞周期調節因子CyclinE1の発現量を測定した。また時計遺伝子発現の同期後、RA-FLS を10 %FCS/ DMEMで培養し、WST-8法を用いて32 時間まで経時的に細胞増殖活性を測定した。その結果、Bmal1抑制下では、CyclinE1の発現量は8時間以降有意に低下した。また、細胞増殖活性は24時間以降に減少傾向を示した。CyclinE1の転写領域にはBmal1が制御するE-box類似配列が存在することから、Bmal1抑制下でCyclinE1発現量が減少し、細胞増殖活性が低下傾向を示したことは、時計遺伝子と細胞周期調節因子を介した、新たなRA-FLS増殖制御の可能性を示唆するものである。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通りRORα阻害剤SR1001、REV-ERBα促進剤GSK4112、CBP/p300阻害剤C646を用いた検証と、RNA干渉による対比実験を行い、TNFα誘導性CCL2発現の機序探索に一定の目途を立てることができた。また、RA-FLSの増殖に直接的に関与すると我々が考えるBmal1遺伝子についても、その制御機構に、細胞周期調節因子の視点からアプローチを開始することができた。ともにRORE配列を起点とした転写機構に則った機序が共通しており、当初立案した実験計画が妥当であった点も同時に確認できており、今後の実験遂行についても期待が持てるものとなった。
1.、RORα阻害剤SR1001、REV-ERBα促進剤GSK4112がが、CCL2以外の炎症性メディエーター(TNFα、IFN-g、IL-1、IL-6、IL-17、IL-23)産生に与える影響をRA-FLSから得たRNAを用いたリアルタイムPCR法と、培養上清を用いたELISA法で評価する。2.RA-FLSが病的パンヌスを形成する要件となるRA-FLS遊走能の亢進状態を検証するため、上記アンタゴニスト・アゴニストを用いて、培養滑膜細胞のトランスウェルアッセイ(Cell MigrationAssay Oris Pro:Platypus Technology社)を行う。同時に、滑膜細胞アクチン繊維束の集光顕微鏡下で観察し、Rhoファミリー蛋白群の発現変化をウェスタンブロット法で検討する。3.ReverbαsiRNAをRA-FLSに導入し、ROREを介した転写抑制が失効した状態でBmal1また前述の炎症性メディエーター発現が亢進するかをリアルタイムPCR法とELISA法により検討する。この対照実験としてRorα遺伝子発現ベクターをRA-FLSに導入し、RORE転写亢進状態でのBmal1 また炎症性メディエーター発現への影響を①③と同様の手法により検討する。
すべて 2018
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