研究課題
関節リウマチ(RA)の病態に関与するケモカインCCL2は細胞遊走を制御し、時計遺伝子Bmal1と同様に転写因子RORα/REV-ERBαに制御される。昨年までの結果を発展させるため、今年度は、TNFα誘導性CCL2発現におけるRORα/REV-ERBαとヒストンアセチル化酵素CBP/p300の役割について更なる検証を行った。【方法】初代培養RA滑膜細胞に対して、RORα阻害剤SR1001、REV-ERBα促進剤GSK4112(各20μM)、 CBP/p300阻害剤C646(25μM)を用いて前処理後、TNFα(10ng/ml)刺激を行った。また、RNA干渉を用いてCbp /p300両遺伝子発現を抑制した細胞に対してTNFα刺激を行った。各群のCcl2 mRNA発現量(qPCR)と培養上清CCL2(ELISA) を定量した。さらに、C646前処理群後にTNFα刺激した培養上清を用いてスクラッチアッセイおよびF-actin染色を行った。【結果】TNFα誘導性CCL2発現は、SR1001/GSK4112両剤の同時処理やC646処理することで、あるいはCBP/p300発現を低下させることで抑制された。さらに、C646前処理群後にTNFα刺激した培養上清は、DMSO前処理群後にTNFα刺激した培養上清と比べて滑膜細胞の遊走が抑制され、アクチン重合も抑制された。【結論】転写因子RORα/REV-ERBαとヒストンアセチル化酵素CBP/p300を介したTNFα誘導性CCL2の発現は、RA滑膜細胞の遊走を制御することが示された。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究成果から、今年度はケモカインCCL2の細胞遊走にあたえる影響に着目した検討を行った。検証には、従来から用いているヒト初代培養系滑膜細胞に加え、不死化滑膜細胞(吉富製薬より供与)の2種類の滑膜細胞を用いた。結果は双方の細胞において共通しており、このことを、Ccl2 mRNA発現量(qPCR)と培養上清CCL2(ELISA) の定量的な方法と、スクラッチアッセイおよびF-actin染色の定性的な方法で、多角的に検証できた。
時計遺伝子を介したRA病態形成に対するケモカインCCL2の影響がin vitro実験系において十分に検証できた。特にRA滑膜炎やパンヌス形成におけるCCL2の抑制性の作用が期待できることを踏まえ、次年度はモデル関節炎を用いたwhole bodyでの検証を進めることで、RA新規治療薬の提唱を目指した検証を行う。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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