研究課題
本年度は、以下の研究を主に進めた。(1)RA患者における関節破壊への関与が示唆されるRANKL産生Beffは、Th1環境下にてメモリーB細胞から分化誘導される。マイクロアレイを用いて、この分化過程において著明に発現増強される遺伝子について網羅的解析を行った結果、ケモカインCXCL9とCXCL10を新たに同定した。さらに、Th1細胞との共培養下にて、CXCR3+スイッチメモリーB細胞からT-bet+CXCL9/10産生Beffが誘導された。さらに、このBeffは、RA患者の関節液中に豊富に存在し、共存する活性化Th1細胞と正の相関が見られた。Beffから産生されるCXCL9/10はCD4+T細胞の関節内への集簇に関与することが強く示唆される。(2)RAにおいて、CD4+T細胞はBeffの分化誘導に重要な役割を果たすが、CD8+T細胞の中にも同様の機能をもつサブセット(PD-1hiCD8+)を新たに同定した。このサブセットは、IL-21産生を介して高いB細胞ヘルパー能を持ち、近年CD4+T細胞サブセットの一つとして着目されている末梢性ヘルパーT細胞 (Tph)と類似していることが判明した。このサブセットによるサイトカイン産生性Beffの分化誘導についてはさらに解析が必要である。(3)SLE患者において、上記RA患者でも同定されたT-bet+Beffが存在することを見出した。興味深いことに、このBeffは高いIFN-γ産生能を持つことも判明した。SLE病態はIFN signatureで特徴づけられることから、T-bet+Beffの分化誘導メカニズムや病態への役割について今後さらに解析が必要である。研究期間全体を通じて、抗体産生細胞とは異なるサイトカイン産生性Beffを新たに同定し、各自己免疫疾患の病態における役割を明らかにすることができた。
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Cell Immunol
巻: 360 ページ: 104263
10.1016/j.cellimm.2020.104263
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https://www.1nai.med.kyushu-u.ac.jp