研究実績の概要 |
全身性強皮症の主な病因は血管病変、ならびに不可逆的瘢痕化と臓器不全をきたす皮膚と内臓の線維化と考えられている。強皮症の繊維化を抑制する治療薬はいまだ開発されていない。線維化を促進するサイトカインとしてIL (interleukin)-6, IL-4/IL-13, CTGFなどがある。強皮症患者では血清中のCTGF濃度が著明に上昇していることが報告されている。我々はDNA免疫法により独自に樹立したnative formの4つのモジュールに対する中和活性を持つ抗CTGFモノクローナル抗体を有しており、このCTGFを標的とした抗線維化薬の創薬を目的としている。そのため2種の強皮症モデルマウス(ブレオマイシン誘発性強皮症モデル、Topoisomerase I (Topo I)誘導強皮症モデルマウス)を用い、抗CTGF抗体投与による病態の改善に関する効果を皮膚・肺の病理学的評価、生化学的、免疫学的評価を行うことにより検証するため、topoisomerase1+CFAにより強皮症モデルマウスを作成し、抗CTGF抗体を投与した。皮膚・肺組織の炎症および線維化に関連する遺伝子の発現解析を行った。抗CTGF抗体投与群において皮膚肥厚の改善傾向をみとめた。また、肺病理(マッソン・トリクローム染色)では、誘導群で膠原線維の増生を示唆する所見があり、ヒドロキシプロリンにより定量化し治療の効果を判定をおこなった。皮膚組織の遺伝子発現解析においては、CTGF, ACTA2, col3a1,TNFαにおいて非誘導群に比較し治療群での有意な発現低下、肺組織ではIL-17, SPP1, ACTA2において非誘導群に比較し治療群での有意な発現低下をみとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗CTGF抗体投与による病態の改善に関する効果を皮膚・肺の病理学的評価、生化学的、免疫学的評価を行うことにより検証するため、topoisomerase1+CFAにより強皮症モデルマウスを作成し、抗CTGF抗体を投与した。皮膚・肺組織の炎症および線維化に関連する遺伝子の発現解析を行った。抗CTGF抗体投与群において皮膚肥厚の改善傾向をみとめた。また、肺病理(マッソン・トリクローム染色)では、誘導群で膠原線維の増生を示唆する所見があり、ヒドロキシプロリンにより定量化し治療の効果を判定をおこなった。皮膚組織の遺伝子発現解析においては、CTGF, ACTA2, col3a1,TNFαにおいて非誘導群に比較し治療群での有意な発現低下、肺組織ではIL-17, SPP1, ACTA2において非誘導群に比較し治療群での有意な発現低下をみとめた。
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今後の研究の推進方策 |
Topoisomerase I (Topo I)誘導強皮症モデルマウス同様の強皮症のモデルマウスであるブレオマイシン誘導性強皮症モデルマウスを用い、Topo I誘導強皮症モデルマウスと同様の解析を行い抗CTGF抗体の皮膚硬化、肺の線維化の抑制効果を明らかにする。具体的には6週齢のC57BL/6J(雌)にTopo1(500units/ml)をCFAと1:1で混合したエマルジョンを300μlずつ2週間ごとに皮下投与し合計4回投与する。①(誘導なし;生理食塩水)・プラセボ(control IgG)、②誘導あり・プラセボ(control IgG)、③誘導あり・抗CTGF抗体(Topo1投与3日前より投与開始)、④誘導あり・抗CTGF抗体(Topo1投与4週間後より投与開始)、⑤誘導あり・抗CTGF抗体(Topo1投与8週間後より投与開始)の4群に分けて血液を採取しRNAの抽出, ELISA法, western blot法によりCTGF, IL-17等の発現の変化を確認する。脾臓を採取しFACS法にてCD4,CD8, B220, CD25, CD62L, IL-7R, CD11c, CD45等のリンパ球表面マーカーを用いリンパ球動態解析を行い抗CTGF抗体の作用を評価する。
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