研究実績の概要 |
強皮症モデルマウスを作製し皮膚硬化・肺線維化における抗CTGF抗体の治療効果を検討するため、本年度はブレオマイシン誘導性強皮症モデルマウスを作製し、抗CTGF抗体を投与しその有効性を病理学、免疫組織学的に検討した。具体的には生後6週のC57BL/6 (雌)を用いブレオマイシン100μl(生理食塩水で希釈し濃度0.5mg/ml)を、隔日背部に皮下注射し3週間行う①(誘導なし;生理食塩水)・プラセボ(control IgG)、②誘導あり・プラセボ(control IgG)、③誘導あり・抗CTGF抗体(ブレオマイシン投与3日前より開始)、④誘導あり・抗CTGF抗体(誘導3週後より投与開始)の4群(各6匹)を作製し、抗CTGF抗体(200μg/匹)は腹腔内投与とし12週齢の時点で皮膚・肺の病理学的評価、生化学的、または免疫学的評価を行った。皮膚病理では、有意差はないものの、PCに比べ治療群で皮膚肥厚の改善の傾向をみとめた。また、皮膚組織の線維化系サイトカイン、炎症性サイトカイン(SMA, platelet derived growth factor, CD45, Smad-2, von Willebrand Factor (vWF), F4/80, arginase, IL-6)のmRNA発現量において、治療群とPC間での有意差はみられなかったが、治療群はNCに比べて、CTGF, ACTA2, TNFαにおいて有意な低下をみとめた。肺病理では、NCに比べ、PCや治療群で膠原線維の染色が強くみられた。また、肺組織の線維化系サイトカイン、炎症性サイトカインのmRNA発現量においても皮膚同様、治療群とPC間での有意差はみられなかったが、SPP1, ACTA2において、治療群がPCに比べ低下の傾向をみとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
病理学的な評価:マウスの皮膚切片をパラフィン固定しヘマトキシリンエオジン染色とマッソントリクローム染色にて皮膚の厚さを測定する。皮膚の厚さはepidermal-dermal junctionとdermal-fat junction間で測定する。皮膚硬化は真皮に蓄積した細胞外マトリックスの程度と相関し、SScの病態をよく反映するため皮膚硬化をsmooth muscle actin 陽性細胞数にて評価した。膠原繊維の評価については皮膚パンチ生検した組織と肺の組織をヒドロキシプロリン染色にて行い、治療群とコントロール群において差を認め、免疫蛍光染色についてもホルマリン固定した皮膚、肺のパラフィン切片をSMA, platelet derived growth factor, CD45, Smad-2, von Willebrand Factor (vWF), F4/80, arginase, IL-6の各抗体により染色し評価したところ、コントロール群と比較しCD45,IL-6について治療群において有意な減少を認めた。また生化学的評価については血液を採取しRNAの抽出, ELISA法, western blot法によりCTGF, IL-17の発現の変化と、脾臓を採取しFACS法にてCD4,CD8, B220, CD25, CD62L, IL-7R, CD11c, CD45のリンパ球表面マーカーを用いリンパ球動態解析を行ったところ、治療群とコントロール群において差が出る傾向のものがあり、今後さらなる解析を進めていく予定である。
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