研究課題
ダニ・花粉・黄色ブドウ球菌はプロテアーゼを生産・含有し、獲得免疫を介さずに上皮および皮膚バリアを破壊するとともに種々の細胞を刺激・活性化することによって、炎症惹起と獲得免疫の成立を促進する。経皮的なアレルゲン感作はアトピー性皮膚炎のみならず喘息・鼻炎などの他のアレルギー疾患の成立にも重要である。先行研究において申請者はプロテアーゼ抗原を皮膚表面へ塗布する新規マウスモデル等を独自に構築し、皮膚炎症・感作がプロテアーゼ活性依存的に促進されることをはじめて報告している。本研究では、申請者の構築した複数の経皮感作モデルを解析することによって、プロテアーゼ抗原による皮膚刺激がどのような機序で皮膚炎・経皮感作、そして経皮感作成立後の気道アレルギー発症を促進するのかを解明するとともに、より効果的かつ安全な予防・先制医療・治療のための新規標的を同定することを目的としている。本年度の研究実績は以下のとおりである。(1)皮膚感作相:追加構築した新規経皮感作モデルを含めて引き続き解析を進めている。薬剤投与あるいは遺伝子欠損による促進・抑制の現象を見いだした。(2)皮膚感作後の効果相:経皮感作後のプロテアーゼ抗原吸入によりアレルギー性気道炎症を発症するモデル等において炎症性脂質メディエータの関与を解析中である(経皮感作なしのモデルの解析結果を先行報告した)。追加構築した新規経皮投与モデルが先行モデルと比較して多彩な皮膚症状を伴うことを見いだした。 プロテアーゼ抗原経皮投与による経気道感作・気道炎症に対する予防モデルを新規構築した。(3)皮下感作モデルにおいて新規機序を見いだした。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度、発展のポテンシャルが期待できる新規成果を得た。すなわち(1)先行構築したモデルを修飾し構築した新規モデルは種々の皮膚炎の症状を伴っており、その解析から興味深い新知見を得つつある。(2)プロテアーゼ抗原経皮投与によるアトピーマーチ(気道炎症)発症に対する予防モデルを構築した。予防に使用する経皮抗原のプロテアーゼ活性の有無によって、気道炎症惹起時における炎症性Thサブセットに差異が生じる点は新規性が高く、臨床的意義を考える上でも興味深い。(3)皮下投与感作モデルで新規機序を見いだした。本研究のコンセプト枠内での上記成果は独自性が高く、学術的および臨床との関連における価値・発展性が高い。一方、本研究立案当初に期待した一部モデルについての進捗状況は部分的である。すなわち、当初の計画以上の新たな進展もあったが、当初の計画案の個別項目を見ると停滞した部分があった。よって総合的には「おおむね順調に進展している」と自己評価する。
本年度は、コンセプト枠内での想定以上の新たな方向性への進展があったが、当初案の個別項目を見ると停滞した部分があった。時年度も、開始当初の計画に過度に固執せず、全体としての研究成果と将来の発展に向けた価値を高めるべく、研究の力点を柔軟に調整して進める計画である。
当該年度事務手続き〆切時期の関係により少額の次年度使用額が生じた。次年度の通常使用の中で消耗品として使用する計画である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件)
Journal of Investigative Dermatology
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臨床免疫アレルギー科
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皮膚科の臨床 (増刊 変わりつつあるアトピー性皮膚炎の常識-最新の知識と治療の極意-)
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