研究課題/領域番号 |
18K08419
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
佐藤 慎二 東海大学, 医学部, 教授 (90276238)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 抗MDA5抗体 / 皮膚筋炎 / 間質性肺疾患 / 予後不良因子 / 血漿交換療法 |
研究実績の概要 |
【目的】抗MDA5抗体は,皮膚筋炎(Dermatomyositis: DM),特に筋炎症状に乏しい皮膚筋炎(Clinically amyopathic DM: CADM)に見出され,急速進行性間質性肺炎(Rapidly progressive interstitial lung disease: RP-ILD)との密接な関連が知られている.本年度は,予後不良予測モデル(血清フェリチン ≧500 ng/mL,血清CRP ≧1.0 mg/dL,血清KL-6 ≧1000 U/mL,抗MDA5抗体陽性)を用いて予後不良例に対する有用な治療法について検討をおこなった. 【方法】2019年まで当科を受診した抗MDA5抗体陽性のRP-ILD 併発DM患者のうち,抗MDA5抗体陽性に加え,血清フェリチン≧ 500 ng/mL,血清CRP ≧1.0 mg/dL,血清KL-6 ≧1000 U/mLの予後不良因子を3つ以上満たした予後不良例14症例を対象にした.治療として副腎ステロイド大量療法に免疫抑制薬2剤併用した強力な治療に治療早期から血漿交換療法(PE)を併用した群の非併用群に分けて転帰を診療録から後ろ向きに調査し比較検討した.統計学的解析は,χ2検定を用いておこなった. 【結果】14例中,治療早期からPEを導入したPE群は3例,PEを導入しなかったnon-PE群11例であった.PE群の平均年齢は61±10歳,女性2例,男性1例で,全例予後不良因子4つであった.一方,non-PE群の平均年齢は57±12歳,女性5例,男性6例で,予後不良因子4つが3例,残りの8例は3つであった.PE群3例は全例で生存していたが,non-PE群では生存例は3例のみで,予後不良因子が4つの全3例,死亡していた.生存率は,PE群 100%に対して,non-PE群では27.3%であった(P=0.055). 【結論】抗MDA5抗体陽性DMに併発するILDに,従来の治療に加えて早期から血漿交換療法を導入する事で,さらなる予後改善の可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
予定していた経気管支肺生検あるいは肺生検組織から凍結切片標本を作成し,免疫組織染色の手法を用いてMDA5,免疫グロブリン,補体(C3, C4)および免疫複 合体の発現を検討することならびに臨床経過との関連の検討は,肺・皮膚組織の収集が達成できなかったために,解析に至らなかった.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,次年度も鋭意,検体収集を努める予定である.近隣の施設に連絡をとり,臨床症状より,同疾患が疑わしい症例を紹介していただき,積極的に受け入れるよう努力する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に予定していた検体の収集が達成できなかったため,その検討に使用する蛋白解析および細胞分離の ための試薬などに経費を使用しなかった. 今年度使用しなかった経費は,次年度に集まった検体の解析のための費用に充てる予定である.
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