研究課題
抗MDA5抗体は,皮膚筋炎(Dermatomyositis: DM),特に筋炎症状に乏しい皮膚筋炎(Clinically amyopathic DM: CADM)に見出され,治療抵抗性で予後不良の急速進行性間質性肺炎(Rapidly progressive interstitial lung disease: RP-ILD)との密接な関連が知られている.標的抗原のMDA5は,自然免疫におけるウィルス感染防御に重要な役割を果たすことから,ウィルス感染ならびにMDA5や抗MDA5抗体がRP-ILD併発DMの発症や病態に深く関わる可能性が推定されており,それらの発症や病態との関連を解明することは,新たな治療法確立の足がかりになる可能性が期待されている.本研究では,これまでの研究期間を通じて,抗MDA5抗体陽性のRP-ILD 併発DM患者を対象として,生命予後と関連する因子の同定ならびに予後不良と予測される患者に対する有用な治療法の検討をおこなった.予後不良因子の検討では,実臨床で測定可能な検査の中で,従来から報告されている血清KL-6値,血清フェリチン値ならびに血清CRP値に加え,血清SP-D高値であることが予後不良因子として有用であることを見出した.また,血清KL-6値 ≧1000 U/mL,血清フェリチン値≧500 ng/mLならびに血清CRP値 ≧1.0 mg/dLを満たした予後不良症例の治療法について後ろ向きに検討したところ,副腎ステロイド大量療法に免疫抑制薬2剤併用した強力な治療に治療早期から血漿交換療法(PE)を併用した群では非併用群と比較して生存率が高く,早期からのPE併用療法が予後不良例に有用である可能性が示唆された.この事実は,ウィルス感染によって引き起こされた自己免疫現象に伴って出現した抗MDA5抗体に何らかの病原性がある可能性を示唆するものと考えられる.
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Mod Rheumatol Case Rep.
巻: 5 ページ: 87-94
10.1080/24725625.2020.1826641
カレントテラピー
巻: 38 ページ: 26-31