好中球は、感染初期に働く重要な免疫細胞の一つであり、好中球のミトコンドリアの形態の異常は、易感染性になる原因の一つとして報告されている。好中球は、通常、活性酸素種の産生の抑えるために、解糖系を用いてATPを産生している。一方、体内に病原体が侵入すると、好中球は大量のATPを必要とすることから、ミトコンドリア内の電子伝達系を使ってATPを産生していると考えられている。申請者は、好中球の研究をするなかで、好中球を細菌性ペプチドで刺激すると、好中球のミトコンドリアが短時間に融合し、酸化的リン酸化の量も増加することを見出した。しかし、細菌性ペプチドによる、このような変化が、どのようなメカニズムで短時間に起こるのかについては謎である。そこで、本研究では、細菌性ペプチドであるfMLPの刺激によって、好中球のミトコンドリアが融合する分子メカニズムを明らかにすることにした。 申請者は、昨年度までに、fMLPの刺激による好中球のミトコンドリアの融合には、MFN2が関わっているおり、この発現を抑えると、ミトコンドリアの融合、酸化的リン酸、好中球様細胞に分化させたHL-60細胞のケモタキシスも抑えることを明らかにした。さらに、MFN2を制御する分子を制御する分子の同定し、ミトコンドリアの融合に関与することを見出している。 そこで、今年度は、昨年度までに同定したタンパク質の性質を調べた。同定したタンパク質は、ミトコンドリアの融合に関与するだけでなく、その発現を抑えると、好中球様細胞に分化させたHL-60細胞のケモタキシスも抑えられることが明らかになった。さらに、MFN2と結合することも明らかになった。
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