研究課題/領域番号 |
18K08424
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
青柳 哲史 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (50581609)
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研究分担者 |
久志本 成樹 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50195434)
工藤 大介 東北大学, 医学系研究科, 講師 (30455844)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | IL-36サイトカイン / 細胞外小胞体 / 敗血症 / 好中球 / 単球・リンパ球 |
研究実績の概要 |
菌血症・敗血症は致死率の高い疾患で、微生物に応答する宿主免疫に着目した病態解明・治療開発が重要である。本研究では、ヒトの菌血症およびその重症病態である敗血症における新規IL-1サイトカインファミリーメンバーの一つであるIL-36サイトカイン(3つのアゴニスト:IL-36alpha, IL-36beta, IL-36gamma、1つのアンタゴニスト:IL-36RN)に着目し病態解明と治療薬としての可能性を模索することが目的である。 これまで、In vitroで微生物(グラム陽性菌・グラム陰性菌)に応答するヒトの貪食細胞(好中球・末梢血単核細胞)および血管内皮細胞から誘導・分泌されるIL-36サイトカインの同定および分泌形態を明らかにしてきた。特に、グラム陰性菌により刺激を受けた末梢血単核球から主にIL-36gammaが誘導・分泌されるが、好中球から細胞外小胞体に包埋される形で主にIL-36RNが分泌されることを明らかとなった。また、IL-36gammaは血管内皮細胞における凝固誘導、細胞死および透過性亢進に関与していることを明らかにした。以上より、特にグラム陰性菌に誘導されるIL-36gamma、IL-36RNは敗血症の病態である炎症・血管内皮傷害、凝固能異常に関与している可能性が示唆された。 さらに、健常人・敗血症患者における細胞外小胞体の表面マーカーの同定と細胞外小胞体に包埋されるIL-36サイトカインの種類を同定した。敗血症患者において血漿中のIL-36gamma濃度は健常人のそれと比較すると上昇しており、IL-36RN濃度は好中球から分泌される細胞外小胞体の数と正の相関を認めた。以上より、In vitroで観察された現象が、実際の敗血症患者においても観察されることより、IL=36gamma、IL-36RNは敗血症の病態を形成するkey cytokinesと考えられた。 現在敗血症マウスモデルを使用し、IL-36RNによる治療効果を検討行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では上記目標を達成するため以下の4つの研究を計画している。 ①ヒトの末梢血細胞を使用した微生物に応答するIL-36サイトカインの同定・分泌様式の解明 ②IL-36サイトカインの血管内皮細胞に与える影響 ③ヒトの健常人・敗血症患者の血液サンプルを使用したIL-36サイトカインの同定・分泌様式の解明 ④敗血症動物モデルを用いたIL-36サイトカインの臨床的効果 ①~③に関して、ほぼ終了しており次年度は④を中心に計画している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、敗血症動物モデルを用いたIL-36サイトカインの臨床的効果について検討を行っており、すでに好中球を除去することで重篤な敗血症動物モデルの作成に成功し、現在IL-36アンタゴニスト投与による治療効果を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物を用いた研究が、計画より遅れたため次年度使用額が生じた。 引き続き、敗血症動物モデルを用いたIL-36サイトカインの機能解析を行う予定である。
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