研究課題
菌血症および重症病態の敗血症におけるIL-36サイトカインに着目した病態関与の解明と治療への可能性について検討を行った。P. aeruginosa(PA)を人末梢血単核球(PBMCs)と多核好中球(PMNs)で刺激した結果、PBMCsよりIL-36アゴニストの一つIL-36gが産生され、PMNsより主にIL-36Raが産生され細胞外小胞体(EVs)に包埋される形で細胞外に放出される。敗血症患者の血漿中IL-36gは健常人と比較し有意に上昇し、血漿EVs中にIL-36Raを認め、敗血症患者でEVs中IL-36Raレベルの有意に上昇し、好中球由来EVs数と正の相関関係にある。また、好中球に発現するIL-36RaはPBMCsからのPAやLPSによる炎症抑制に関与していた。血管内皮細胞傷害は敗血症で、炎症、凝固、血管透過性亢進に関係する、IL-36gで血管内皮細胞を刺激するとtissue factorの発現が亢進し、ヒト全血の凝固促進に関係する。また、血管内皮細胞をapoptosisに誘導し、血管透過性亢進に寄与する。一方、IL-36Raはこれらを抑制する。敗血症患者の血漿中TF濃度は優位に上昇しており、IL-36g濃度とわずかな相関関係を認めた。エンドトキシン敗血症モデルで、好中球を除去すると死亡率が上昇するが、好中球除去エンドトキシン敗血症動物モデルで血漿中IL-36g濃度は優位に上昇し、血漿およびEVs中のIL-36Ra濃度は優位に低下していた。本モデルにIL-36Raを投与すると生存率の改善、炎症、血管透過性、凝固を抑制していた。以上より、敗血症において好中球に発現するIL-36Raは同時に産生されるIL-36g-IL-36Rシグナルを抑制し敗血症の病態を改善させる。IL-36Raは敗血症の治療分子の一つの可能性がある。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
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