研究課題
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、1970年代に出現した多剤耐性菌であるが、未だ克服されていない。本邦のほぼすべての病院から分離され、MRSA感染症による年間死亡者数が1万4千人、医療費が約1900億円増加していると試算されている。その感染症対策は、医学的、医療経済的にも喫緊の課題である。これまで宿主の状態がMRSA感染症の病態に寄与することは知られていたが、菌体側の因子による病態への関与は、毒素因子などは検討がされているものの、他因子については、詳細は不明であった。本研究課題においてMRSA側の因子として、その遺伝子情報に着目し、感染症に及ぼす影響について検討した。MRSAの網羅的遺伝子解析を行い、その変異と、感染症の臨床病態を評価した。その結果、接着・バイオフィルム関連の遺伝子領域に変異を持つ株は、有意に血流感染症を増加させることを明らかにした。(Iwata Y. Wada T. et al. Int J Infect Dis. 2020, 特願2015-056620)。また、接着・バイオフィルム関連の遺伝子発現の制御物質は、新規の感染予防薬となり得ることを明らかにした(Iwata Y. Wada T. et al. BBRC 2021)。さらに、最近増加している市中感染株の薬剤耐性と遺伝子変異の関与(Iwata Y. Wada T. et al. J Infect Chemother.2020)などを報告した。これらの結果は、細菌の遺伝子情報が感染症の病態に深く関与していることを示していた。今後、MRSA感染症に対する対策を考えるうえで、その遺伝子情報、および遺伝子発現の制御が新たな治療のターゲットになる可能性が示された。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 537 ページ: 50~56
10.1016/j.bbrc.2020.12.078
Toxins
巻: 13 ページ: 369~369
10.3390/toxins13060369
Inflammation and Regeneration
巻: 41 ページ: -
10.1186/s41232-021-00171-w
Journal of Nephrology
巻: 34 ページ: 773~780
10.1007/s40620-020-00940-9
BMJ Open Diabetes Research & Care
巻: 9 ページ: e002311~e002311
10.1136/bmjdrc-2021-002311
Scientific Reports
巻: 11 ページ: -
10.1038/s41598-021-88724-4
BMC Nephrology
巻: 22 ページ: -
10.1186/s12882-021-02510-y
巻: 9 ページ: e002241~e002241
10.1136/bmjdrc-2021-002241
Lupus
巻: 30 ページ: 1739~1746
10.1177/09612033211034234